西尾陽丸 新潟県中越地域における表層地盤に着目した地震動増幅特性の検討 池田隆明,志賀正崇 日本は地震発生が極めて多い地域であり,近年においても2011年の東北地方太平洋沖地震,2016年熊本地震など,人命および社会基盤に甚大な被害をもたらす地震が相次いで発生している.これらの地震による被害要因の解明は災害軽減の観点から極めて重要である.2024年1月1日に発生した能登半島地震においても,道路盛土の崩壊や液状化およびそれに伴う側方流動,など多くの被害が発生した.震度分布に着目すると震源が位置する石川県内では最大震度7を観測した一方で,震源から離れた新潟県内においても最大震度6弱を観測した.新潟県内で最大震度の6弱を観測したのは長岡市中之島の1地点であり,震源距離が近い周辺の強震観測点と比較しても大きい震度が観測されている.さらに,当該地点では,過去の複数地震においても,同様に周囲の観測地点より大きな震度が観測されている.そのため,長岡市中之島における観測地震動は,地震動に与える影響のうち表層地盤に起因する地震動増幅特性,すなわちサイト特性によるものと考えられる.そこで本研究では,当該地点の表層地盤構造について検討を行った. まず,J-SHISにより公開されている表層地盤増幅率(ARV)を用いて,強震観測点における震度との比較を行った.その結果,ARVが大きい地点ほど震源距離が長い場合でも大きな震度が観測される傾向が認められた.一方で,長岡市中之島を含めた新潟県内の複数地点では,ARVと震源距離との間に明瞭な相関関係は確認されなかった.そのため,当該地点においては現地調査からARVを詳細に評価するとともに,震度が大きかった理由についてARV以外の要因も含めた検討が必要である. 次に,ボーリングデータを元に構築した地盤モデルを用い,等価線形化法による地震応答解析を長岡市中之島とその周辺の地点で実施し,工学的基盤における推定波形の比較を行った.さらに,常時微動探査を実施し,H/Vスペクトルと地盤モデルから算出される成層地盤の伝達関数との比較により,構築した地盤モデルの妥当性を検証した.その結果,長岡市中之島ではボーリングデータに基づくモデルよりも深部に工学的基盤が位置している可能性が示唆された.そこで,強震観測記録を用いて工学的基盤深度の推定を行い,より深部に基盤面を設定した地盤モデルを構築した.その結果,修正モデルでは工学的基盤波形が周辺地点とより整合的な形状を示したことから,長岡市中之島において大きな震度が観測される原因として,浅部の表層地盤構造に加え,既往ボーリングデータでは十分に把握されていない深部の地盤構造が関与している可能性が示された.