櫻井真希 コンクリート構造物の環境劣化予測に適用したサイバー空間シミュレータの開発 中村文則 近年,空間情報技術の急速な発展により,社会基盤構造物を3次元仮想空間に正確に再現できるようになっている.本研究では,3次元仮想空間内に再現した構造物を対象に,コンクリート構造物の環境劣化予測解析が実施できるサイバー空間シミュレータの開発を行った.さらに,構築したシミュレータを利用し,自然環境作用を変化させた数値実験を行い,コンクリート構造物の内部劣化物質量(水分・塩分)の影響について検討を行った.この研究は,急速に発達する空間情報技術を利用し,コンクリート構造物の環境劣化予測解析を幅広く利用できる技術に高度化することを目的としたものである. 本システムは,沿岸部に設置された実構造物を3次元仮想空間内で再現し,その仮想的な構造物に作用する自然環境とコンクリート内部の劣化促進物質(水分と塩分)の移動過程を統合して予測解析できるものである.具体的には,予測解析の機能として,@仮想空間内で実構造物を可視化・操作し日時に応じた環境作用を確認する機能,A飛来塩分の到達,降雨粒子の到達,日射による温度変化の予測結果を境界条件として,内部の水分・塩化物イオン量を予測する機能を実装した.対象とした実構造物は,日本海沿岸部に設置された名立大橋である.予測期間は2001年11月〜2025年10月31日の1時間間隔とした. その結果,橋桁周辺の自然環境作用を時空間的に可視化し,構造物に作用する自然環境を確認・評価できることが明らかとなった.内部予測では海側側面の塩化物イオン量が陸側より大きいことが確認された.表層部の塩化物イオン量は飛来塩分の供給と降雨による洗い流し等の損失が釣り合い,平衡状態に近づくことが示された. 数値実験では,構造物に到達する塩分量を時系列で整理し,最大塩分ケース(2005年,2013年,2017年)と最少塩分ケース(2016年,2019年,2024年)を設定,それぞれを8回繰り返して24年間を予測した.浸透塩化物イオン量は表面から50mmの位置で最大塩分ケースが最少塩分ケースの1.4倍程度となった.実環境ケースでは初期に最大ケースと同程度の浸透が生じ,その影響で深部(60〜100mm)の塩化物イオン量が大きくなることが示された. 以上より,本システムは自然環境作用と内部予測モデルを統合して使用でき,自然環境作用の変化を想定した数値実験が可能であることを示した.