笠井 倫 表面保護工法によるレジンコンクリートマンホールの劣化抑制 下村 匠 レジンコンクリート(以下,REC)は,高強度・高耐久な特性からマンホール等の地下構造物に広く普及してきた.しかし,長期供用された実構造物で想定以上の強度低下が報告されており,合理的な維持管理手法の確立が求められている.劣化の主因は水分浸透であるため,本研究では,表面保護工法による吸水抑制効果を検証するとともに,実際の壁厚サイズに相当する大型供試体の力学挙動確認および数値解析を行い,実共用されている構造物への適用を想定した劣化寿命予測を試みた.まず,小型供試体を用いた40℃温水浸漬試験および20℃高湿度試験により,各種表面保護材の性能を評価した.その結果,含浸系保護材はRECの緻密な組織内部に浸透せず,抑制効果は認められなかった.一方,被覆工法である塗膜系保護材(エポキシ樹脂・有機系塗料)については,質量増加量から明確な抑制効果を判定するには至らなかった.これは,温水環境下で塗膜自体が水分を吸収して膨潤し,その重量増加分が素地の吸水抑制効果を相殺したためと考えられ,従来の質量変化のみを指標とする評価手法では,REC内部への遮水性能を厳密に切り分けて判定することが困難であるという課題が示された. 次に,実際のマンホール壁厚(100mmおよび150mm)に相当する大型供試体を用い,60℃温水環境下における力学挙動を確認した.この結果を,小型供試体のデータに基づき,水分浸透深さと曲げ強度の相関を考慮して構築した数値解析モデルと比較したところ,実機スケールにおける質量増加および曲げ耐力の低下挙動を良好に再現できることを確認した.これにより,供試体寸法や水分の浸透方向によらず,本解析モデルが実部材の劣化予測に高い精度で適用可能であることを実証した.また,本試験に合わせて遮断性能に優れるエポキシ樹脂塗料の追加検証を行ったが,やはり質量増加の抑制は限定的であった.これは塗膜自体の吸水特性によるものであり,正確な性能評価には評価手法の再考が必要であることを提示した. 以上の知見に加え,劣化の温度依存性をアレニウス則に基づき検討した結果,40℃試験は地中環境(20℃)の約5.6倍,60℃試験は約31.4倍の時間軸に相当することを算出した.本研究は,現時点で評価が困難な表面保護工法に依存するのではなく,素地自体の劣化挙動を解析により予測し,適切な時期に点検を開始する「予防保全」への転換を提案するものである.