恩田 樹安 機械学習・数値シミュレーション技術の融合による風況・塩分粒子解析の効率化 中村 文則 沿岸部に位置するコンクリート構造物では,飛来塩分による塩害劣化が深刻な問題となっており,その対策の一つとして塩害環境予測が挙げられる。既往研究では,風況や飛来塩分の到達過程を把握するために,3次元数値シミュレーションが開発され,高精度で予測できることが報告されている。その一方で,高度な数値シミュレーションによる予測では,長期間かつ多変量の環境作用を考慮した予測解析を実施する際に,膨大な計算時間を要するという問題がある。本研究では,この問題を解決するために,予測解析の効率化で実績がある機械学習FNO(Fourier Neural Operator)に注目し,コンクリート構造物近傍の風況予測への機械学習の適用性について検討を行った。さらに,その結果を利用して,構造物に作用する飛来塩分の予測解析を実施し,その結果について考察を行った。 風況を予測するための機械学習モデルは,風況の数値シミュレーションの計算結果を教師(学習)データとする方法で構築した。飛来塩分の予測解析は,機械学習で得られた風の場の予測結果を境界条件として,粒子追跡法により飛来塩分粒子の移動・到達過程の予測解析を実施した。対象とした予測ケースは,風洞実験を再現した風向を固定したケースと構造物に作用する風向を変化させたケースである。 その結果,風況の予測に機械学習による方法を適用させることにより,予測解析時間が1ケースあたり10秒程度に短縮できることが確認された。機械学習による風速分布は,数値シミュレーションの結果と概ね一致し,相対誤差6%程度であることが示された。機械学習から得られた風の予測結果を利用した飛来塩分の到達過程の計算では,既往の風洞実験結果と傾向が概ね一致し,機械学習を用いた手法が塩害環境予測に適用可能であることが明らかになった。さらに,構造物に作用する風向を変化させた風況の予測解析では,未学習の風向条件下においても,構造物形状に応じた風の流れの変化を再現できることが示された。構造物に作用する風向を変化させたケースの飛来塩分粒子の計算では,風向に応じた飛来塩分粒子の到達分布を予測できることが明らかになった。以上の検討より,本研究で構築した機械学習モデルは,従来の膨大な計算コストを削減しつつ,コンクリート構造物の複雑な塩害環境作用を効率的に予測・評価できる可能性を有することが示された。