籔祥吾 腐食切れの生じた鋼トラス橋圧縮斜材の連成座屈強度式の検討 岩崎英治  我が国では高度経済成長期に集中的に建設された橋梁の老朽化が急速に進行しており,建設後50年を超える橋梁の割合は今後さらに増加することが見込まれ,限られた人員と財政の中で効率的な維持管理が求められている.このような背景のもと,損傷部材の構造性能を合理的かつ簡便に評価できる手法の確立は極めて重要である.  鋼トラス橋の圧縮斜材は箱型断面を有し,すみ肉溶接によって構成されている.経年劣化により溶接部に腐食減肉が進行すると,溶接部が分離する「腐食切れ」が発生する場合がある.腐食切れが生じると,板要素の局部座屈耐力が低下し,斜材全体の座屈挙動に影響を及ぼす.特に,柱としての全体座屈と板の局部座屈が相互に影響し合う連成座屈挙動を適切に評価することが,安全性評価において重要となる.  既往研究では,弾塑性有限変位解析(FEA)によらずに座屈強度を簡易に算出する方法として修正積公式が提案されている.しかし,その提案に際して,少数の部材諸元に基づいており,多様な実橋条件に対する妥当性については十分な検討がなされていない.  そこで本研究では,既往研究で扱われた12部材に加え,新たに5部材の実橋諸元を追加し,計17部材を対象として単一の腐食切れを有する斜材の弾塑性有限変位解析を実施した。FEAにより得られた座屈強度と修正積公式による算定値を比較した結果,誤差は-0.12σY〜0.10σYの範囲に収まり,追加部材を含めても一定の妥当性が確認された. しかし,依然として差が確認されたため,差の低減を目的として補正式の作成を行った.局部座屈強度の断面積を重み係数とした局部座屈強度の平均値Qの健全時に対する比,Q/Qa=0を変数とした補正係数Q’を使用した座屈強度式を作成した結果,差の範囲は-0.12σY〜0.06σYとなり,修正積公式と比較して危険側の差を低減できることを示した. 加えて,本研究では補正式2についても検討を行った。補正式2ではQを変数とした補正係数Q’を使用した座屈強度式の作成を行った結果,差の範囲は-0.08σY〜0.10σYとなっており,安全側の差が小さくなった.実用化する上では安全側の差を小さくするよりも危険側の差を小さくする必要があるので,一つ目の補正式の方が優れていると考えられる.  本研究により補正式は修正積公式よりも精度の向上が確認されたものの,依然として誤差は残っており,更なる精度向上の余地がある.また,本研究で扱った斜材諸元には,細長比パラメータおよびQ/Qa=0に偏りが見られたため,より多様な斜材に適用可能にするためには更なるデータの収集を行う必要がある.