及川 晶啓 温度変化を与えた引抜成形材GFRP箱型部材の温度依存性 林 厳  FRP(Fiber Reinforced Polymer)は,樹脂を母材とし繊維を強化材として組み合わせた複合材料であり,優れた比強度や比弾性係数といった機械的特性を有するだけでなく,軽量性や耐食性にも優れることから,多様な分野で利用が拡大している。なかでも,ガラス繊維を強化材とするGFRP(Glass Fiber Reinforced Polymer)は,材料コストと力学性能のバランスに優れていることから,近年では土木構造物の分野においても主要な構造材料の一つとして導入が進められている。橋梁部材や補強材,仮設構造物などへの適用が検討・実用化されており,鋼材に代わる新たな構造材料として期待されている。一方で,GFRPを構成するマトリックス樹脂は高分子材料であるため,その力学的特性には顕著な温度依存性が存在することが知られている。特に温度上昇に伴い樹脂の剛性や強度が低下する可能性が指摘されており,この特性は部材全体の力学挙動に大きな影響を及ぼすと考えられる。土木構造物は屋外環境下で長期間使用されるため,季節変動や日射の影響による温度変化を常に受けることから,GFRP部材を実構造物へ適用する際には温度条件が構造性能に及ぼす影響を定量的に把握することが重要である。  本研究では,GFRP部材が実際に適用されている覆工板に着目する。覆工板は地下鉄工事や上下水道工事などの都市インフラ整備において掘削箇所の上部に仮設的に設置され,車両や歩行者の通行を確保するために用いられる重要な仮設構造部材である。施工期間中は道路上に設置されるため,直射日光や外気温の影響を直接受ける環境下で使用される。先行研究では,夏期の直射日光下において道路部材の表面温度が60℃を超える場合があることが報告されており,このような高温環境がGFRP部材の耐荷性能や耐久性に影響を及ぼす可能性が懸念されている。そこで本研究では,覆工板の構成要素として実際に運用されている引抜成形材GFRP箱型部材を対象とし,その曲げ特性に対する温度依存性を明らかにすることを目的とした。具体的には,恒温槽を備えた載荷試験機を用いて低温域から高温域までの温度条件下で4点曲げ試験を実施し,温度変化が曲げ強度,剛性および変形性能といった力学特性に及ぼす影響を評価した。これにより,GFRP覆工板の温度環境下における構造性能を把握し,その適用性および安全性について検討を行った。