千藏 航大 継手板厚が高力ボルト摩擦接合GFRP継手のすべり挙動に及ぼす影響 林 厳 近年,橋梁附属物などに軽量・耐食性に優れるGFRP(Glass Fiber Reinforced Polymer)の適用が期待される.GFRP部材の接合には支圧接合や接着接合が一般的に用いられてきたが,現場適用性と性能確保の観点から,高力ボルト摩擦接合の実用化が期待されている.一方,現行の鋼を前提とした高力ボルト摩擦接合の設計体系をGFRPへ適用する際,板厚などの条件がすべり挙動へ与える影響は十分整理されていない.そこで本研究は,GFRP母板板厚が高力ボルト摩擦接合継手のすべり挙動に及ぼす影響を明確化し,設計や評価の基礎知見を得ることを目的とする. 本研究では母板にGFRP,連結板に鋼板を用い,F10T-M12で構成された1行2列の高力ボルト摩擦接合継手を対象に,(1)FEMによる板厚パラメトリック解析,(2)すべり実験,(3)すべり実験を模した解析による内部状態評価を実施した.解析では継手の対称性を考慮した1/4モデルを構築し,GFRPは直交異方性弾性体として定義し,部材間の接触はクーロン摩擦モデルにより表現した.母板板厚(t = 5,8,11,14 mm)をパラメータとする有限要素解析により,荷重-相対変位関係,初期剛性,およびボルト軸力残存率を整理し,板厚による差異を比較した.加えて,解析結果を検証するため母板t = 5,14 mmを用い,積層条件としてCSM(Chopped Strand Mat)有無を付与した試験体に対して引張荷重を与え,荷重,変位およびボルト軸力を計測し,板厚およびCSMの有無がすべり係数とボルト軸力残存率に与える影響を確認した.さらに,実験では直接把握が困難な接触面の面圧分布,およびすべりの進展等を解析的に評価し,板厚とすべり挙動の関係を考察した. 板厚をパラメータとした解析ではすべり荷重の板厚による影響は無い一方,すべり到達までの相対変位は板厚増加に伴い低下し,初期剛性は母板板厚を5 mmから14 mmにすることで約2.4倍に増大した.ボルト軸力残存率は載荷に伴い外側ボルトの低下が大きいが,板厚が増すと内外差は縮小した.実験では,板厚の増加に伴いすべり係数が増加し,母板板厚5 mmに対して14 mmで30%から38%増加した。さらにCSMを付与した場合,においてもすべり係数は増加し,13%から20%増加した.追加の解析により,板厚増加は接触領域の局所化を抑え,荷重伝達を広い範囲へ分散させる傾向が示された.また,外側ボルト周辺から接触領域が縮小してすべりが外側から内側へ段階的に進展する挙動が確認された. 以上より,板厚は継手部の剛性や変位進展に加え,接触状態の変化を通じてすべり係数およびすべり進展の過程にも影響することを示した.