小林拓矢 下フランジに腐食減肉を生じた負曲げを受けるI桁の座屈強度に関する研究 岩崎英治  我が国の橋梁インフラは、高度経済成長期に集中的に整備されたものが多く、供用開始から長期間を経過した橋梁が年々増加傾向にある。近年では、老朽化が進行した橋梁の割合が着実に増加しており、構造性能および耐久性の低下が顕在化している。これらの橋梁は、劣化の進行により構造性能および耐久性が低下し、放置した場合には重大事故や社会的・経済的損失につながる恐れがある。一方で、橋梁の点検・補修・更新を担う技術者や作業員は慢性的に不足しており、措置が必要と判断された橋梁に対しても、十分な対応が進んでいるとは言い難い状況にある。少子高齢化の進行や建設業全体の人手不足を背景に、限られた人員および予算の下で、すべての橋梁を同時に高い水準で維持管理することは現実的ではない。このような背景から、橋梁ごとの劣化状況や損傷の程度、さらには社会的影響の大きさや緊急性を踏まえ、限られた維持管理資源を効率的かつ合理的に活用することが求められている。その有効な方策の一つとして、補修や補強の優先順位を明確に設定することが挙げられる。リスクの高い橋梁から重点的に対策を講じることが可能となり、事故の未然防止および橋梁機能の長期的な確保につながる。  そこで本研究では、鋼I桁橋の中間支点付近における下フランジの局部座屈強度に着目し、腐食減肉が進行した場合における局部座屈応力を定量的に評価することを目的とした。特に、中間支点部では負の曲げモーメントの作用により下フランジが圧縮状態となることから、腐食による断面欠損が局部座屈挙動に及ぼす影響を把握することが重要である。そのため、有限要素法(FEM)解析ソフトを用いた弾塑性解析を実施し、腐食減肉の程度を段階的に変化させた複数のケースに対する解析を行った。さらに、得られた解析結果を基に、腐食減肉が局部座屈応力に与える影響について詳細な考察を行い、腐食量の違いによる座屈応力の低下傾向およびその変化の特徴を整理し、局部座屈強度との関係性を明らかにした。これらの考察結果を踏まえ、局部座屈応力を表現するための評価式を仮定し、解析結果を用いた回帰分析を実施した。その結果、腐食が進行した鋼I桁橋の中間支点付近における下フランジの局部座屈応力を、比較的簡易に評価可能な新たな評価式を提案した。