横山 麗 津波遡上によって生じる地形変動の解析法の検討 細山田 得三 本研究は,津波遡上時に生じる地形変動の再現性向上を目的として,掃流砂および浮遊砂を統合的に扱う数値解析手法の検討を行ったものである.沿岸域では津波来襲に伴い流速や底面せん断応力が急激に増大し,大規模な土砂移動と地形変化が発生するが,既往研究では採用される流砂量式やパラメータ設定が異なり,統一的な評価が困難であった. そこで本研究では,非線形長波理論式に基づく津波伝播計算と,掃流砂輸送式,浮遊砂の移流拡散方程式,およびExner式を連成させた一次元数値モデルを構築し,津波による地形変動過程を再現した.数値実験では,水位の盛り上がり量を0.1から0.5までの5パターンに変化させ,その他の条件は同一設定とし,流砂量の時空間累積分布を比較した. その結果,掃流砂は遡上先端付近における局所的な侵食・堆積を支配し,浮遊砂は移流拡散により広域的な地形変動を生じさせることが確認された.さらに最大水位上昇量を変化させた感度解析より,津波規模の増大に伴い土砂輸送量および地形変化量が非線形的に増大することが示された.以上より,両流砂形態を統合的に考慮するモデルで津波時の複雑な地形変化を再現可能であることがが明らかとなった. 本手法は将来的な二・三次元解析や実海域への適用に向けた基盤となることが期待される.さらに,本研究では解析条件として格子間隔や時間刻みを一定に保ち,物理定数や粗度係数を固定した上でパラメータの影響を体系的に検討した.その結果,浮遊砂の寄与は地形変動の空間的広がりを決定づける重要な要素であり,掃流砂との相互作用によって複雑な侵食・堆積パターンが形成されることが明らかとなった. また,水位,流量,底面せん断応力および浮遊砂濃度の時間変化を比較することで,各水理量と地形変動との対応関係を定量的に整理した.これにより,津波規模や水理条件の違いが地形応答に及ぼす影響を包括的に理解できる可能性が示された.本研究で得られた知見は,津波堆積物の形成過程の解釈や沿岸防災計画における被害予測精度の向上にも寄与すると考えられる. 今後は多粒径土砂への拡張や高次元モデルとの連携を進めることで,より現実的な津波地形変動解析の確立を目指すとともに,観測データとの比較検証を通じてモデル妥当性のさらなる向上を図る予定である.本研究は津波防災分野における数値解析技術の発展に資する基礎的成果を提示するものである.