別宮崇嗣 海底火山噴火による空振現象の基礎的挙動の観察と津波伝播時間への影響 細山田得三 2022年1月のトンガ諸島フンガ・ハアパイ火山噴火では,日本を含む太平洋全域で顕著な潮位変動が観測された.しかし,当時の気象庁による津波予測は,実際の到達時刻は予測よりも2?4時間も先行した.この先行波の要因として,火山噴火に伴う「空振」による二次的な水面変動が指摘されている.本研究は,空振誘起海面波の発生・伝播メカニズムを基礎的に解明し,1次元数値計算モデルを用いてプラウドマン共鳴による増幅プロセスと到達時間の先行現象を再現・評価することを目的とした. 本研究における大気の計算には,重力作用下における圧縮性流体の基礎式を用い,US標準大気を初期条件として高度60kmまでを対象とした断面2次元モデルを構築した.水面変動の計算には1次元非線形長波方程式を用い,大気圧の変動を外部強制力として入力する大気・海洋結合モデルとした.まず一様水深の仮想海域において,波速音速比(波速/音速)の変化が水面変動に与える影響を検証した.その後,トンガ噴火の実際の地形データ(ETOPO5)に基づき,東京・奄美・父島の3地点を対象としたシミュレーションを実施し、実測値および当時の予測値と比較した. 一様水深での検証により,波速音速比が1に近づく(水深約12,000m付近)とプラウドマン共鳴によって水面変動が劇的に増幅する物理的実体を確認した.実地形を用いた計算では,音速に近い速度で伝播し振幅の小さい「第一波(空振起因)」と,その数時間後に到達する振幅の大きい「第二波(地殻変動等による通常の津波)」という,実測波形の特徴を良好に再現した.本モデルによる到達時刻は,従来の長波理論に基づく気象庁の予測値よりも大幅に実測値に近く,先行波の再現に成功した. 本研究により,トンガ噴火における先行波が空振と海洋の共鳴現象(プラウドマン共鳴)によるものであることが物理的に裏付けられた.従来の予測手法に空振の影響を導入することで,予測精度の向上が期待できる.今後の課題として,実際の気象場の動的な反映や2次元平面モデルへの拡張が挙げられる.