春木 勇二 深層学習による画像認識を用いた低波浪時での離岸流検出のための研究 犬飼 直之  本研究は,海岸域における水難事故の要因の一つである離岸流を対象とし,深層学習を用いた離岸流検知手法の検討を目的とする.離岸流は海岸付近で波浪と地形の影響により発生する沖方向への強い流れであり,一般の利用者がその発生場所を把握することは容易ではない.また近年では海岸監視員の減少などもあり,離岸流の発生状況を常時把握することが難しくなっている.既往研究では画像認識技術を用いて離岸流を検出する研究が進められているが,多くは波浪が比較的大きい条件を対象としている.しかし,実際は海水浴場可能な低波浪条件において離岸流による事故が発生していることから,低波浪時における離岸流発生場所を把握する手法の構築が重要であると考えられる.  そこで本研究では,物体検出アルゴリズムYOLOv8を用い,離岸流発生箇所を検知する深層学習モデルの構築を試みた.学習データセットとして,藤塚浜海岸および網代浜海岸で撮影された映像を用い,離岸流発生場所の特徴として波峰線の交差および水面の乱れに着目して複数のデータセットを作成した.さらに,単一の特徴のみを学習したモデルと,複数の特徴を組み合わせたモデルを構築し,学習データ構成の違いが検知性能に与える影響について検討した.  性能評価は二段階で実施した.まず,離岸流の発生位置を正解としてラベリングしたテストデータセットを用い,適合率,再現率,mAP50,mAP50-95を評価指標として精度検証を行った.その結果,学習時に用いた特徴と類似した条件下では比較的高い検知性能が得られることが確認された.また,複数の特徴を組み合わせたモデルでは,再現率が向上する傾向が見られ,離岸流の見逃しを低減できる可能性が示された.一方で,撮影条件や海岸条件が異なる場合には検知性能が低下する傾向が確認された.次に,動画に対する予測結果を用いて検出率を算定した.その結果,フレーム単位での検出率は高くないものの,波の周期に対応する時間区間ごとに評価することで検出率が向上することが確認された.また,水面の乱れを学習したモデルおよび複数特徴を組み合わせたモデルにおいて比較的安定した検出結果が得られた.  以上の結果より,離岸流の発生特性に応じた特徴を学習データとして構成することにより,低波浪条件における離岸流検知の可能性が示された.一方で,異なる海岸条件や撮影条件に対する適用には課題が残ることも確認された.今後は多様な波浪条件や海岸条件を含むデータの収集を進めることで,より汎用的な離岸流検知手法の構築が期待される.