塚野音吾 平野部を流下する河川で流下する水難事故の特徴把握 犬飼直之  平野部河川の水難事故は生活圏に近く立ち入りやすい一方,河道が緩やかに見えるため危険が過小評価されやすく,局所的な急深部や複雑流況により重大事故が生じる.本研究は,岡山県旭川,宮城県白石川,福岡県犬鳴川の3事例を対象に,事故地点の地形(急激な水深増加)・視認性(水底認識性)・流況(循環流等)を統合して,事故発生から復帰困難化に至る過程を整理し,危険地点の抽出と予防対策の方向性を提示することを目的とした.  手法として,天気図,AMeDAS降水,水位観測によって当日の外力条件を整理したうえで,現地調査を実施した.現地ではUAV空撮と聞き取りにより事故状況と周辺環境を把握し,測深器や測量棒による水深計測で急深域の位置と規模を確認した.さらに,着色剤散布による流れの可視化とADCP観測により流速分布や循環流の有無を捉え,底質採取により河床材料特性を整理した.得られたデータから地形データを整備し,白石川では平面2次元流況計算と移流拡散計算を行って循環流の形成や流下経路を再現し,観測結果との整合性を検証した.  比較の結果,3事例に共通して,@浅瀬の先に短距離で急深部が現れる地形,A濁りや水面反射,河床色の変化などにより「遠浅が続く」と誤認しやすい視認条件,B流向変化や流速急変,循環流を伴う複雑流況が重なり,姿勢喪失後に岸方向へ戻れない状況が形成されることが確認された.特に,進入しやすい浅瀬が行動を誘発し,その直後に急深化して足が届かなくなることが引き金となり,複雑流況下で浮上・立ち直りが困難となるという事故進展の連鎖が整理できた.また白石川では砂嘴周辺で堆積傾向が示され,砂嘴先端が材料特性(安息角に近い急斜面)により局所崩壊しやすい可能性があり,足元支持の喪失が転倒や姿勢喪失を誘発する危険性も示唆された.  以上より,平野部河川の事故予防には,「浅瀬先端の急深化境界」「水底不可視化が始まる視認閾値域」「循環流が生じる流況域」の重なりを重点的に評価する複合的な判別視点が有効である.対策としては,危険域の見える化(看板,注意喚起,危険線の設定)や進入動線の制御,監視・救助導線の確保などの地点対策に加え,「見えている浅瀬の先ほど危険」「膝より深い水深には立ち入らない」など行動ルールの普及を組み合わせ,事故の連鎖を初期段階で断つことが重要である.