西澤 海人 単眼深度推定AIを用いた道路路肩の雪堤高計測の検討 高橋 一義   雪国の山間部では,豪雪の頻発化や除雪オペレータの減少・高齢化が深刻な課題となっており,迅速かつ的確な積雪状況の把握が求められている .従来,高精度な3次元計測にはLiDARが用いられてきたが,機器が高価でリアルタイム性に欠けるという課題があった.  一方,スマートフォンを用いた路面判定システムも提案されているが,10cmを超える積雪深を定量的に把握することは困難である .  本研究は,ドライブレコーダーの動画から抽出した静止画像に対し,最新の単眼深度推定AIモデル「Depth Pro」を用いて3次元点群を生成し,道路路肩の雪堤高を計測する手法の有効性を検討することを目的とする .特に,生成された点群を実スケールへ換算するためのスケール係数の安定性や,撮影条件による汎用性について,MMSによる実測点群と比較検証を行った .長岡市内の3地点(笹崎,愛宕,大手通り)で2025年1月から3月に撮影されたドライブレコーダーの動画を使用し,歪み補正を施した静止画像を抽出した .この画像に「Depth Pro」を適用してメートル単位の深度マップを生成し,ピンホールカメラモデルに基づき3次元の「深度点群」を構築した . 計測では,Cloud Compareを用いて道路路肩の(雪堤高)を算出した .評価指標として,MMS点群での計測値を深度点群での計測値で除した「スケール係数」を定義し,同一画像内での変化,奥行き方向の変化,撮影日ごとの変化の3パターンでその安定性を解析した .  深度マップの結果,建物や電柱などの地物が多い市街地では空間構造が概ね妥当に再現されたが,降雪による視距制限やテクスチャの乏しい雪面では深度推定が不安定になり,値が均一化する傾向が見られた . スケール係数の算出結果では,理論上は一定であるはずの値が,撮影条件や計測地点によって大きく変動することが判明した .単一画像内での変動係数は,条件が良い地点(笹崎地点の特定日)では約7.1%に抑えられたが,撮影日を変えた比較では21%?37%と極めて不安定であった .これは,単眼深度推定が相対的な位置関係の把握には優れるものの,積雪や雪堤のような白色領域に対して絶対的な距離を正確に推定することが難しいためと考えられる .  本研究により,ドライブレコーダーとAIを用いた雪堤高計測の可能性を一部の条件下で示すことができた.一方で,実務利用に耐えうる精度で実スケール換算を行うには,単一のスケール係数では不十分であることが明らかになった .今後は,テクスチャ不足を補う手法の検討や,推定結果の補正アルゴリズムの開発が課題である.