和田拓実 高頻度光学衛星画像を用いた山岳地帯の雲域下の積雪域推定に関する研究 高橋一義  融雪期における山岳地帯の積雪分布は,雪害対策や水資源管理の観点から継続的な把握が求められる.しかし光学衛星画像は雲被覆の影響を強く受け,観測不能となる領域が頻繁に発生するため,積雪域を面的かつ連続的に把握しにくい課題が挙げられる.  本研究では,高頻度光学衛星Sentinel-2から生成した積雪履歴図を用いて,融雪期における雲域下の積雪域を推定する手法を構築し,その推定特性と適用条件を整理することを目的とした.  対象地域は新潟県・群馬県県境周辺の山岳地帯とし,融雪期のSentinel-2データを解析に用いた.そして,雲・雲影等を除外したうえで目視判読を併用し,解析可能なシーンを選定した.  この結果,利用可能な晴天画像は一部に限られ,雲域下推定が不可欠であることが定量的に確認された.積雪履歴図は,各観測日に土地被覆分類を行い,画素を積雪・混合・植生の3クラスに分類した結果を,画素ごとに積算することで作成した.分類にはNDSIを中心とする複数の正規化差分指標を用いた.これにより,単一日の観測結果に比べて,積雪の出現傾向を安定して表現できるようになった.また,混同行列に基づく精度検証を行い,分類結果の妥当性も確認された.  雲域下の積雪域推定では,単一雲域条件と複数雲域条件の双方を対象として検討した.雲域周囲にリング領域を設定し,積雪履歴図から得られる履歴スコアと土地被覆分類画像との整合性に基づいてしきい値best_zを求めた.その結果,単一雲域条件および複数雲域条件のいずれにおいても,best_zは概ね30付近の値を示し,リング幅を1?100pxの範囲で変化させても大きな変動は認められなかった.一方で,雲量が極めて小さい条件かつリング幅が1pxのような極端な条件では,しきい値にわずかなばらつきが生じた.また,リング幅を拡大してもKappa係数に明確な向上傾向は認められず,平均Kappa係数は単一雲域条件で0.615,複数雲域条件で0.616であった.一方,正解率はいずれの条件においても概ね0.92?0.94程度の比較的高い値を維持しており,雲域下の積雪域を一定の精度で推定できていたことが示された.  以上より,積雪履歴図に基づく雲域下積雪推定は,融雪期における雲被覆による欠測を補完し,積雪分布を面的に把握する上で有効であることが示された.今後は,実際の雲域形状を用いた検証に加え,積雪履歴図の生成に用いる観測期間や画像枚数の違いが推定結果に与える影響を整理し,雲域の面積や形状に応じた周辺情報の参照範囲の設定方法を検討する必要がある.