樋口響 地震観測記録を用いた地震動伝播特性の分析 池田 隆明 志賀 正崇 日本では毎年多くの地震が発生することから,構造物の耐震設計において,実際の発生機構を考慮した入力地震動を設定することは重要である.特に被害を生む大地震が発生したものの,当該地域で地震計が設置されていない場合,入力地震動を適切に計算することは,被害をメカニズム解明や以後の被害予測の基礎となる.そこで本研究では,新潟県上中越地域・佐渡地域・富山県新川地域に着目し,この地域の地表面観測地震動に対し伝播経路特性が与える影響を評価することを目的とした.観測記録の振動数特性を分析する手法としてはフーリエスペクトルを用い,フーリエスペクトル計算には能登半島周辺で発生した7地震によって,新潟県上中越地域,佐渡地域と隣接する富山県新川地域の計15地点で観測された地震波形のデータを用いた.なお,この15地点はすべて防災科学研究所の強震観測網(K-NET)の地震観測点である.これらの観測データと,地震の伝播する経路を地震基盤面の深さ,観測点の地盤情報,地震の断層破壊規模を相互比較して,伝播経路が地表面の地震動に与える影響を主に振動数領域から考察を行った. 分析結果から震源特性とサイト特性を同程度であるとした場合に,伝播経路特性の影響により上越沖の地震基盤面が深い伝播経路を通ると1Hz未満の振幅が大きくなるという結果が得られた.本研究で得られた伝播経路特性を把握することによって当該地域での振動数帯を考慮した入力地震動の推定が可能となる.本研究では,新潟県上中越地域,佐渡地域と隣接する富山県新川地域の計15観測点に着目し,記録が得られた7つの地震を対象に分析を行った.今後,より詳細な振動数特性の分析を行うためには,より多くの到来方向や規模の異なる地震の数を増やして分析を行うことが重要だと考えられる.