井上雄貴 全天球カメラを用いた構造物の外形把握に関する研究 池田 隆明 志賀 正崇 PLATEUやVIRTUAL SHIZUOKA など3次元オープンデータの利活用が広まる中で,一時期でない時間的に高頻度な3次元データ生成は,複数時期の比較や,インフラ点検による亀裂の進展具合や地震被害による建物の沈下や傾斜度の比較を可能にさせる.一方,3次元データの生成手法に関しては,LiDARとSfM-MVSの2種類が広く利用されている.中でもSfM-MVSは,複数の画像から3次元データを再構築するものであり,通常のフレームカメラに対して適用した研究は多く存在する.本研究では,特に災害発生直後に着目し,時間的制約がある中で撮影時間を短くし,モデル生成領域を最大化させるために,全天球カメラの利用が有効であると考えた.しかし全天球カメラはその性質上,画像端部の歪領域が大きく,3次元モデルに誤差が生じうる.そのため本研究では,全天球カメラによる点群データ生成において,現実世界で点群の品質や処理速度に影響を与えうる因子の評価を簡易的に行い,ある環境下における最適な条件を提案することを目的とする. 研究手法としては,長岡技術科学大学 情報システム棟を対象にして,複数の全天球カメラを用いて動画撮影を行い,市販のソフトウェアを利用して,点群データの生成を行った.生成した点群データについて,解像度,撮影距離間隔 (FPS) ,使用カメラを3つを変化させ,解析時間,精度,詳細度の3つの観点から,比較検討を行った.また一部についてその原因をカラーヒストグラムを用いて,詳細度について検討を行った.結果として,解像度を上げると解析時間と詳細度が増加することが判明した.一方で精度は解像度を上げても増加しなかった.また 撮影距離間隔 (FPS) は解析時間を大きく上昇させ,詳細度も大きく上昇した.一方で精度に関しては,撮影距離間隔に影響されなかった.カメラの種類については,撮影時に輝度の幅が広くなるような撮影機材や撮影環境を選んだ場合に,タイポイント数の増加が見られた.以上より,本研究の撮影条件や撮影対象において,最適なパラメーターは3840×1920 であり,撮影距離間隔は0.5m (FPS = 2) であった.しかしながら,より広範な環境条件において同様のパラメータが最適であるのかについては,より詳細な検討が必要である.