栁 洸聖 個別要素法を用いた等体積繰り返しせん断過程における液状化エネルギー容量に関する検討 池田隆明、志賀正崇 液状化予測において現在広く用いられているFL法では表現が難しい複雑な地震動特性に対して,統一的に液状化予測を行うための新たな簡易法として,エネルギー法が提案されている.このエネルギー法は,液状化を引き起こす地震動の速度時刻歴波形から計算される上昇エネルギーと液状化強度比から回帰式を用いて計算される液状化エネルギー容量との比から判定を行う手法である.この液状化エネルギー容量の概念は,液状化発生までに地盤内部から消費される累積損失エネルギーが,砂の密度や地震外力に対して非依存関係であることを示す既往研究を前提としている.これら既往研究における砂の密度と外力の大きさに関する事実は主に実験結果のみによって示されているが,密度や外力によって液状化エネルギー容量に差が出るのかどうかについて統一的な見解は出ていない.一方で,エネルギー法が実験的にも解析的にも妥当であることを示すことができれば,本手法の基礎がより強固なものとなり,将来的に実務の場への導入が進む可能性も期待される.そこで既往研究における実験結果に対して,個々の粒子のマクロとミクロパラメータを考慮可能な個別要素法(DEM)を用いた解析によって,液状化過程におけるエネルギー損失について評価するとともに,液状化エネルギー容量の密度及び外力に対する依存性を検討した.本研究では,個別要素法のフレームワークとしてオープンソースのYadeを用いた解析を行い,密度及び外力を決定するパラメータとして,目標間隙比e及びせん断応力振幅比CSRをそれぞれ変化させたときの内部エネルギー変化を追跡した.その結果,損失エネルギーが粒状体の内部エネルギーの変化として生じたと仮定した場合,液状化エネルギー容量及び累積損失エネルギーの大部分は粒子間接触の摩擦による損失であることが確認された.またその摩擦損失エネルギーに関して,液状化過程を過剰間隙水圧比ruの変化に基づいて捉えた場合,外力(CSR)と密度(e)のどちらに対しても初期液状化直前から顕著に依存することが確認され,液状化過程を両振幅せん断ひずみDAの変化に基づいて捉えた場合は,外力に対しては液状化過程全体を通して次第に依存度が上昇し,密度に対してはDA=30%時点付近から顕著に依存することが確認された.したがって,液状化過程をru及びDAそれぞれの変化に基づいて捉えたどちらの場合においても,等体積繰り返しせん断過程における摩擦損失エネルギーは,密度及び外力に対して依存関係にあると考えられる.