ガルザ ブスタマンテ セバスティアン イサーク 風環境条件に応じた橋桁への飛来塩分の到達過程に関する実験的研究 中村文則 本研究は,日本国内の橋梁が直面している塩害劣化の問題に焦点を当て,適切な対策を検討することを目的としている.日本では,高度経済成長期に建設された多くのコンクリート橋が50年以上使用されており,特に沿岸部や降雪地域において塩分の影響による劣化が深刻な課題となっている.海風や凍結防止剤に含まれる塩分がコンクリートや鉄筋に浸透すると,構造材の耐久性が低下し,最悪の場合,橋の安全性が損なわれる可能性がある.そのため,橋梁の維持管理や補修計画を適切に立てるには,塩分の付着特性や劣化のメカニズムを明確にすることが不可欠である.本研究では,新潟県糸魚川市に位置する青海川橋を対象に,風洞実験と数値シミュレーションを用いて橋桁への塩分の到達特性を分析した. まず,風洞実験では青海川橋の縮尺模型を作成し,風速や風向を変化させながら橋桁の各部分への塩分付着量を測定した.その結果,塩分は特に橋の下面に多く付着することが確認された.また,意外なことに,塩害は海側よりも陸側の橋桁で強く発生する傾向が見られた.これは,風が橋を通過する際に流れが乱れ,塩分が橋の背面側に集積しやすくなるためと考えられる.特に第4橋桁と第5橋桁が最も影響を受けやすいことが分かった.さらに,風洞実験のデータを基に数値シミュレーションを行い,橋桁への塩分付着パターンを再現した.シミュレーション結果は風洞実験の結果と概ね一致し,特に陸側の橋桁での塩分付着量が多いことが確認された.これにより,風の流れが塩分の分布に与える影響を明確にすることができた. 本研究の結果から,風の流れによって橋桁への塩分付着量が大きく変化し,特に陸側の橋桁が塩害の影響を受けやすいことが明らかになった.この知見は,橋梁の維持管理や補修計画を立てる際に,塩害リスクの高い部位を特定し,適切な対策を講じるために重要である.例えば,塩害リスクの高い箇所に防食塗装や定期的な洗浄を施すことで,劣化の進行を抑えることが可能となる.今後は,さらに詳細なシミュレーションを行い,より実用的な塩害対策の提案を進めていく予定である.