GONZALEZ PORRAS ALFREDO ISAI 下フランジに腐食減肉を生じた負曲げを受けるI桁の座屈強度に関する研究 岩崎 英治 日本の老朽化した鋼構造物、特に高度経済成長期(1955~1973年)に建設された橋梁は、腐食による深刻な劣化に直面している。さまざまな構造要素の中でも、負曲げモーメントを受けるI桁の下フランジは、腐食による減肉の影響を受けやすく、座屈破壊のリスクが特に高い。本研究では、局所的な腐食がこれらの下フランジの座屈強度に与える影響を評価し、保守管理の優先順位付けに役立つ知見を提供することを目的とする。 本研究では、有限要素解析(FEM)を用いて、さまざまな腐食条件下における弾塑性座屈挙動をシミュレーションした。腐食の程度は2つのパラメータで表される。(α) はフランジの残存厚さを示し、(β) はフランジ長さ方向の腐食範囲を表す。さらに、実際の鋼構造物の挙動をより正確に再現するため、溶接や鋼板の製造過程で生じる残留応力および初期変形をモデルに組み込んだ。座屈強度の感度を評価するため、7種類の幅厚比パラメータ (R) に対してシミュレーションを実施した。 結果として、フランジ厚さの減少 (α) が座屈強度に最も大きな影響を与えることが明らかになった。これは剛性低下により構造耐力が大幅に低下するためである。一方、腐食の長さ方向への広がり (β) は座屈強度に対して比較的影響が小さく、主要な不安定要因というよりは増幅要因として作用する。また、幅厚比パラメータ (R ≥ 0.7) の高い鋼板は、座屈強度の大幅な低下を示し、破壊のリスクが特に高いことが確認された。 これらの知見は、特に幅厚比パラメータの高い部材に対する予防措置を強化するための、的確な維持管理戦略の必要性を強調している。今後の研究では、腐食モデルの精度を向上させる技術の開発や、全体桁のシミュレーションを組み込むことで、予測型メンテナンスの精度を向上させることが求められる。さらに、腐食パラメータに基づく座屈強度低下を定量化する経験式を確立することで、日本のインフラ維持管理における効率的な資源配分を支援することが期待される。