平澤渉 海底地形変動に依存した津波初期波形の生成と伝播 細山田得三 これまで,日本は多くの地震津波被害に遭遇しており,2011.3.11の東北地方太平洋沖地震で発生した津波などにより,津波に関する社会的関心は高い.津波の発生原因は地震や火山現象,地すべりなどが挙げられる.このような津波の発生原因に対して現行の津波数値計算は地震によって生じる海底地盤の鉛直変異を断層モデルなどで予測してその値をそのまま海水面の鉛直変位として与えるという手法をとることが多い.しかし,水平方向への水塊の発散や収束が生じて鉛直水面変動が緩和されるはずであり,水平方向への水の移動が考慮できる方が実現象に近い.本研究では海底地形の鉛直変位の時間変化に応じてその側方への水の動きを評価する考え方を整理することによって様々な海底地形変動に応じた津波初期波形の変動とその伝播特性や,本計算手法の妥当性や対応力について検証した. 本研究の津波造波法は非圧縮性流体の連続式から誘導した,非線形長波方程式の連続式を用いた.本計算手法の妥当性を検証するにあたり,柿沼らの研究をベンチマークとして採用した.柿沼らはVOF法による水面変動を中心とした解析や実験を行っている。海底地形変位量を3つの変形速度によって水面がどのように応答するか時系列の波形を検証し、十分な精度を有することを確認している。それらと本計算手法から得られた結果を比較したところ,3つの変形速度すべてで十分に一致しており本計算手法の妥当性を確認した。 本計算手法の妥当性の確認を受け、次に11ケースの海底地形変化の時間的変動に対する水面変動を検証した。計算結果はすべて動画によって確認でき、静的と動的解析結果を比較したところ、初期波形と伝播過程は静的の方が動的に比べて高い水位をとった。また、津波到達時間も静的の方が動的に比べて早くなった。11ケースの海底地形変化ごとの結果を比較したとこと、初期波形と伝播過程は一方向に強い隆起沈降を持つ地形の場合、ほかの地形に比べて水位が下がった。また、津波到達時間は右側(陸側)に強い隆起沈降を持つ地形の場合、ほかの地形に比べて津波到達時間が短くなった。本計算手法は一方向移動と水平振動といった複雑な地形変動においても水面の応答を確認できた。 本研究は、初期波形、伝播過程や津波到達時間を静的と動的の比較、11ケースの海底地形変化ごとの比較を行ったところ、静的解析の方が動的解析に比べて津波の影響を過大評価している可能性があることがわかる.また,本研究で用いた計算手法は様々な初期条件や海底地盤条件に対応可能なプログラムであることもわかった.