永原 優衣 新潟県沿岸域の港湾における波の港内振動特性に関する研究 犬飼 直之  新潟県内の港は江戸時代から現在に至るまで物流の拠点として人々の生活を支えている.しかし,日本海では冬季風浪による高波の他,うねり性波浪や,津波などが発生し,船舶や施設に被害が発生する可能性がある. そのため,安全な停泊や構造物への影響を発生させない港内静穏度の確保は重要な課題である.  そこで,本研究では新潟県内の港湾を対象に,港内へ入射する波浪や津波の影響を数値実験及び計算で把握した.また,過去に新潟県周辺で発生した地震の震央からの距離と津波周期を把握し,相関関係を調査した.これにより,新潟県内の港湾で水位が増大する条件を把握し,緊急体制時の防災対策のための知見を得ることを目的とした.  まず,波浪について検討を行った.ここでは,2018年新潟東港臨港道路陥没事故を受け,数値モデルNOWT-PARIを用いて波高,波向,周期などの入力条件を変更し,現況及び将来地形で数値シミュレーションを行った.その結果,事故現場付近には波向NNW,Nが多く被害を与えていることが判明した.また,将来地形では現況地形に比べて約20~40%以上の波高低減効果が得られると判明した。  次に津波に対して検討を行った.ここでは,令和6年能登半島地震において新潟県内で津波が観測された姫川港,直江津港,柏崎港,新潟東港,新潟西港の計5港で港内外の観測津波周期及び津波の高さを算出した。また,港内で観測された津波の高さが著しく増大していた様子から共振現象が発生していた可能性があると考え、各港湾の固有周期及び増幅率を算出した。また、水位伝播モデルを用いた数値シミュレーションでも港内の増幅率を算出した。これらの結果から,固有周期と観測津波周期は近い値を取り,複数の港で顕著な増幅率が得られた.このことから,各港の1次モード∼3次モードでの固有周期及び増幅率を算出することで,各港に入射した際に水位が増大する波の周期を予測することが可能となった.  また,過去に新潟県で津波が観測された地震の調査を行った。その結果,震央からの距離がある程度近い場合,震央からの距離と津波の周期にはある程度の相関関係があること,新潟県周辺では周期30分前後の津波が観測されやすいことが判明した.そのため、新潟県内の港湾で今後港湾計画を策定する際には周期30分前後の津波や固有周期について注意し,検討を行うことが重要であると考えられる.