佐藤 藍子 乱さない土の引張強度の測定 福元 豊  地盤の亀裂は,地盤工学的,環境的な面で大きな問題を引き起こす可能性がある.例えば亀裂が進展すると水の浸透が促進されるため,構造物の安全性を低下させる可能性や廃棄物の覆土部分からは汚染物質が流出する可能性がある.この亀裂は地盤に作用する引張応力によるものが多いため,土の引張強度を知ることが重要となる.既往研究では,特殊な型枠が必要となり乱さない土では試験を行うことができなかった.そこで本研究は,新たに提案された真空圧を利用し供試体端部を面的に掴む試験方法で,乱さない土の引張強度を測定することとした.また乱さない土とは別に,再構成試料でも同様に引張試験を行い,乱さない土,再構成試料で圧縮試験も行った.  直径約70mm,高さ約100mmの乱さない土をワイヤーソーを用いて,直径50mm,高さ80mmに成形を行った.成形を進めるうちに小石などが出てくることがあるが,引張試験に影響が出るためこういった部分が空隙にならないように注意する必要がある.再構成では,乱さない土を乾燥させ425µmのふるいに通した.7層で各層25回突き固めを行い,直径50mm,高さ80mmの供試体を作成した.  本研究では,乱さない土を用いて新たに提案された真空圧を利用した引張試験が行えるかを調べた.乱さない土を用いてシルト質土,粘性土,砂質土など様々な土質で引張試験が行えることがわかった.真空圧力の設定注意が必要であり,供試体の有する引張強度よりも真空圧力が高すぎる場合には引張の載荷前に破壊し,低い場合には真空圧力付近で引張強度が停滞することが確認できた.土質によるグラフの挙動の違いも確認でき,粘性土では他の土質と比較しピーク時のひずみが大きく,また緩やかに強度が低下することがわかった.再構成では,乱さない土よりも引張強度が低下し,ピーク時のひずみも小さくなることがわかった,しかし再構成の方法により引張強度に影響が出るため,再構成の方法について検討の必要がある.圧縮強度との比較では,引張強度の1/6~1/10倍となった.今後の課題として,真空圧力の設定や再構成方法についての検討,乱さない土における引張強度と圧縮強度の比較データの収集,含水比や密度など条件を変化させた引張強度の計測が挙げられる.