渡邉 尚幸 粒子構造に着目した多孔質体流れの直接観察 福元 豊  土木工学の分野における多孔質材料は土,岩石,コンクリート,アスファルトなどがあり,これらの材料の経年劣化には内部における浸透流の移動と密接な関係にある.また,他分野における多孔質材料(燃料電池,生体組織,フィルター,膜,繊維など)においても内部の流体の挙動を理解することによって重要な工学的な知見が増えるといえる.  この浸透流の挙動の観察に用いる指標として屈曲度がある.屈曲度は多孔質体内部における拡散係数,透水係数等に相関がありこの多孔質体の物質移動における内部挙動を把握するための重要な指標である.しかしこの屈曲度を測定する方法は幾何的な定義に基づくものや数値シミュレーションが主体であり,実際に実験を行って数値の測定を行うケースが少ない.また、屈曲度に関するほとんどの経験式は,間隙率と表面積の関数となっており,局所的な幾何学構造に関する情報が反映されていない. また,浸透流による内部侵食現象は地盤内部で発生するため,被害の状況を直接的に確認することができない.また,土粒子の侵食や流亡といった地盤工学と,多孔質体中の流れといった流体工学の相互作用を扱うため,基礎的な知見が乏しく,未だに解明されてない点が多い.堤体などの土木構造物の安全性に関して,越流やのり面すべりなどの外面的な損傷に重点が置かれているが,浸透流による内部侵食の損傷に対する安全性の向上も重要な課題である.  そのため,昨年度までの研究により,直接観察することができない土骨格内部の浸透流を,屈折率マッチング技術(RIMS)を使用することで可視化させる実験方法が確立され,透明砂を用いた模型実験を通して,より実現象に近い浸透流の特性を把握するための実験の高度化を進め,昨年度には,粒子配置が一層構造と二層構造のときにおける浸透流の挙動について実験が行われた.特に二層構造における境界部分において,実験的に求めた水理的屈曲度が充填率の変化に依存しない結果が得られた。今回の研究では,地盤構造に見立てた透明砂の構造を変化させることによって粒子構造に着目し,各層および各粒子構造の境界部分における水理的屈曲度を中心とした解析を行うことによって,各構造における既往研究における結果との比較を主に行った.  本研究は透明砂を用いた手法により地盤内部の浸透流の流れを解明することであり,基礎的な知見として浸透による内部侵食現象の解明することを目的としている.