福原 涼斗 土のような脆弱固体材料に対する直接引張試験方法の実用化にむけた検討 福元 豊 土構造物に発生する引張亀裂の多くは引張応力に起因し,地盤工学的及び環境的に重大な影響を及ぼす可能性がある.したがって,亀裂を引き起こす要因である引張力を地盤材料で定量化する方法の検討が必要であるが,地盤材料の脆弱性から既往の直接引張試験方法の適用は困難である.そこで本研究室では,土のような脆弱固体材料に対して適用できる直接引張試験方法の検討を行ってきた.そして,真空技術を利用した方法により様々な土試料に対して本試験方法を適用できる可能性が示された.以上を踏まえ,本研究では,試験方法の実用化に向けた基礎的な検討として,再現性を確保するための試験条件の検討を行った.また,異なる作成方法による2種類の圧密供試体を用い,供試体作製方法が試験結果に与える影響についての検討も行った.  試験条件の検討では,真空圧力,メンブレンの被覆長さ,キャップと供試体の接着確認のための圧縮力,メンブレン端部の処理,載荷速度の各条件を変更して試験を実施した.その結果,真空圧力は,供試体の強度よりも高く設定することが有効であり,適切な圧力範囲が存在することが確認された.メンブレンの被覆長さについては,供試体高さ80mmに対して20mm以上の被覆長さを確保することで安定した結果が得られた.キャップと供試体の接着確認については,適切な範囲の圧縮力が必要であり,過小では接着不良を引き起こすことが確認された.また,メンブレン端部については,捲いた状態の方が再現性のある結果を示し,端部の処理が試験結果に影響を与えることが確認された.さらに,載荷速度については,本供試体においては1mm/min以下の条件において再現性のある結果が得られた.  供試体作製方法の影響については,供試体表面及び内部の空隙が結果に影響を及ぼすことが分かった.特に空隙が多い供試体では,真空圧力の作用範囲が拡大する傾向となった.これにより,供試体の性状が真空状態の形成に影響を及ぼす可能性があることが分かった.  今後の展望としては,本研究で得られた結果の裏付けとして,局所的な応力変化や時系列での亀裂進展挙動の観測が必要であると考える.具体的な方法としては,DIC解析によってひずみ分布解析を行うことが挙げられる.また,サンプル数が限られているため,より多くの試験を実施し,傾向を明確にする必要がある.