CUEVAS SANDOVAL JULIO CESAR 鋼材と樹脂モルタルとの接着強度とその管理方法に関する研究 高橋 修  差抑制工法のひとつに,アスファルトコンクリートとその補強材で構成される可撓性踏掛版がある.これは,鋼製六角格子パネルとアスファルト混合物を使用し,土工部と橋台またはボックスカルバートの境界に可撓性の踏掛版を構築する工法である.土工部に圧密や地震によって沈下が生じた場合,不等辺山型鋼とアンカーボルトで橋台パラペットに固定されている可撓性踏掛版は接合部の沈下を防止する.その結果,パラペットと可撓性踏掛版の接合下部に空洞ができても,段差が生じることなく路面に緩やかな傾斜が形成して車両が通行できることになる.  強度管理が経験的に行われていることが挙げられる.樹脂モルタルの硬化程度は温度条件によってかなり異なることが知られている.本研究では不等辺山型鋼と同じ金属表面と樹脂モルタルの接着強度が養生時間と養生温度によってどのように変化するのか,一面せん断試験を実施して定量的に検討した.本研究の目的は,樹脂モルタルの養生条件と付着強度に関する実データを収集し,現場施工において樹脂モルタルの品質管理を行う上での基礎資料を得ることである.  この実験で使用した供試体は,長方形形状の樹脂モルタルサンプルを82.5×90×20mmの型枠に流し込み,長さ120mmの溝形鋼JIS G 319(25×50×100mm)の上に置いたものである.供試体は,鋼製六角格子パネルの六角形部分が一つ収納できる寸法とし,格子パネルも実際のものを切り出して使用した.樹脂モルタルを混合後,直ちに硬化が始まることから,混合後に計時を開始し,各経過時間における付着強度を測定した.養生時間は90分,120分,150分,180分, 210分とした.また,養生温度を10℃,20℃,30℃に設定した.各養生時間で樹脂モルタルの硬化状況や色調も観察した.  実験結果に関して,温度が高く,養生時間が長くなるとせん断応力も増加している.強度発現の傾向は樹脂モルタルの性質から予想されたものであるが,強度としてのせん断応力の値は有益な結果と言える.150分経過すると、温度によっては、樹脂モルタルが特定の範囲の値で安定することを示している.このようなパターンは,特に養生30℃で確認できる.最終に,各温度の色調ではあんまり変化しないということも分かった. 本研究により,せん断応力を大きく得るための条件を検討してきたが,いずれの条件も経験的に知られているものに一致した.今後,より多くのデータを取得し,メカニズムの理解を深めるためには,環境条件や硬化条件を拡大しながら研究を継続していくことが重要である.