和田悠太 橋面舗装の切削残存層を再利用する乳剤浸透工法の効果と最適仕様に関する研究 高橋修 我が国における一般的な道路橋は,コンクリート床版上にアスファルト層の橋面舗装を施工している.コンクリート床版に雨水等が浸水すると劣化や損傷が促進されるため,床版と橋面舗装の境界面には,床版に対する浸水防止を目的とした防水層が設けられる.この防水層は,橋面舗装の打換工事時に再施工されるが,橋面舗装よりも寿命が長い場合,耐用年数を迎える前に撤去されることが問題点として指摘されている.加えて,橋面舗装の撤去時にバックホウの使用によって,床版表面に引掻き傷等の損傷が生じることも問題視されている.橋面舗装の打換工事では,最初に橋面舗装を20 mm程度残存させて切削するが,この切削残存層を補強して不透水性を改善することができれば,不透水の中間層として再利用が可能で,防水層と床版に損傷を与えないことに加えて,施工に要する工費および工期の縮減に寄与できる. 既往の研究により,橋面舗装の打換時における切削残存層にアスファルト乳剤を浸透させることで,不透水の中間層として活用可能であることが確認されている.この成果を踏まえ,本研究では,乳剤浸透工法を適用する場合の,実用性の観点から最も有効かつ効率的な仕様について検討した.アスファルト乳剤の物性や塗布量,塗布方法について着目し,乳剤浸透工法によって発現する性能の差異について考察した.本研究では,物性の異なる3種類の高濃度改質アスファルト乳剤を使用し,乳剤浸透工法が切削残存層の不透水性および塑性変形抵抗性や破壊抵抗性といった力学的特性に及ぼす影響について評価した. 以上の検討によって,標準の2倍量の高濃度改質アスファルト乳剤を塗布して上層の舗設熱を与えることで,新設アスファルト舗装に相当する不透水性が得られることを確認した.また,標準量の乳剤を塗布することで,切削残存層の破壊抵抗性が向上すると判断した.その一方で,切削残存層に標準の2倍量の乳剤を塗布することで破壊抵抗性が,標準量以上の乳剤によって塑性変形抵抗性が低下する傾向が確認され,切削残存層の力学的性能が低下してしまうことも認められた.乳剤の物性による比較では,高浸透性かつ硬い特性を有する乳剤が最も施工効率が高く,不透水性も十分であると評価した.これらの知見を総合的に評価して,乳剤浸透工法は,即時分解が可能な高浸透性かつ硬い乳剤を標準量だけ塗布することが最も有効であると結論に至った.