バトチュルン ムンフチメグ ミクロ交通シミュレーションを用いたウランバートル市におけるBRT導入時の混雑緩和効果 佐野 可寸志  ウランバートル市では急速な都市化と自動車保有率の増加により深刻な交通渋滞が発生しており、効率的な公共交通システムの導入が求められている。本研究では、ミクロ交通シミュレーションを用いて、ウランバートル市におけるBRT(Bus Rapid Transit)システムの導入が交通混雑緩和に与える影響を分析した。具体的には、既存の三車線道路のうち一車線をBRT専用レーンとして転用することで、交通流動にどのような変化が生じるかを評価した。  BRTは地下鉄やLRTと比べて低コストかつ迅速に導入可能であり、専用レーンを設定することで運行速度と定時性の向上が期待される。世界の他都市での成功事例を参考にし、BRTの導入がウランバートル市の交通状況改善に寄与する可能性を検証した。  分析手法として、四段階推定法を用いた交通需要推計を行い、ロジットモデルによりBRT導入前後の交通手段選択の変化を推定した。その結果、BRT導入後の自家用車利用率は14.9%減少し、BRTの利用者割合は37.4%となることが示された。また、Aimsunを用いたミクロ交通シミュレーションにより、交通流の変化を詳細に評価した。結果として、交通全体の遅延時間は109.3秒/kmから73.95秒/kmへと32.3%短縮し、特にバスの遅延は44.5%短縮された。また、全体の交通密度は7.08台/kmから2.57台/kmへと63.7%減少し、BRT導入による交通流の円滑化が示唆された。  さらに、モードシフト効果の分析では、BRTの導入により公共交通利用が促進され、渋滞の軽減に寄与する可能性が高いことが確認された。しかし、本研究にはいくつかの課題が残る。例えば、ODデータの更新や交通量調査の精度向上が必要であり、BRT以外の施策(信号制御の最適化、一方通行化、自転車レーンの整備など)との組み合わせによる効果検証も今後の研究課題である。  本研究の結果から、BRT導入はウランバートル市の交通渋滞緩和に一定の効果をもたらすことが示された。今後は、より精緻なモデルの構築と実証データの収集を進めることで、BRTの有効性をさらに明確にする必要がある。