氏名:荻井 樂 論文題目:豪雪時における運送会社の行動基準に関する研究 指導教員名:佐野可寸志 概要:本研究は、近年の大雪による大規模な車両滞留問題を解決するため、過去の大規模車両滞留時における車両の行動実態を明らかにし、特に大型車の行動変容について調査を行うことを目的としている。過去の大規模滞留時の交通量の予測と分析を行い、新潟県ヒアリング調査と福井県アンケート調査をもとに、大雪時の車両行動や運行計画について調査した。  2020年と2022年の発生交通量の変化に注目した。2020年では、発生交通量はほぼ変化がなく、大規模車両滞留が少なかったため、通常通りの運行が行われていたと推察される。一方、2022年では通行止め発生と同時に発生交通量が大幅に減少し、通行止め後に一部の車両が運行を後ろ倒しする様子が見られた。これにより、約650台が運行を中止し、98台が後ろ倒しで運行されたことが明らかになった。 さらに、大雪時の運行規則や対応について、運送会社に対するヒアリング調査を行った。調査対象は、新潟県の運送会社6社であり、その結果、大雪時に対応を定めている企業は4社であり、残りの2社は対応を定めていなかった。対応を定めている企業では、大雪が予想される場合、荷主と連絡を取り、運行の中止や前倒しを柔軟に判断していることが分かった。一方、対応を定めていない企業では、建設現場などの特定の荷物について運行の前倒しが求められることが多いという傾向が見られた。  また、福井県で行ったアンケート調査において、運送会社の約半数が大雪時の対応を定めており、その策定時期は主に2020年以降であることがわかった。特に、過去の大規模車両滞留がきっかけとなり、荷主との連絡体制の強化が進められた結果、大雪時の対応についての意識が高まった。しかし、実際に運行の前倒しや後ろ倒しといった具体的な対応策を設けている企業は少数であり、安全優先の行動がどのように実行されているかについては不明確であった。  総じて、過去の大雪による車両滞留事例を通じて、運送会社の行動には変化が見られ、特に荷主との調整や運行時間の変更が重要な要素となっていることが分かった。しかし、大雪時に実際にどのような対応が行われるかに関しては、企業間でのばらつきがあり、運搬品目ごとの対応策の違いや荷主との連絡体制に依存する部分が大きいことが明らかとなった。今後は、運搬品目ごとの具体的な行動実態や、荷主との大雪時の対応についてさらに調査を進める必要がある。