伊田 遼 降雪時の多車線道路におけるミクロ交通シミュレーション 加藤哲平  近年、極端な降雪が増加しており、これにより交通事故や車両滞留が多発している。これらの事例では、積雪により視界不良や路面凍結が発生し、多車線道路においては、車両がスタックしたり、車線変更を行うことでさらなる滞留が発生することが確認されている。この車両滞留のメカニズムとしては、単一車両のスタックや事故が後続車両に影響を及ぼし、結果として全車線が閉塞する現象が挙げられる。従来の研究では、主に単一車両のスタックのリスク評価が行われてきたが、多車線道路での車両滞留に特化した研究は不足している。本研究は、降雪時における車両挙動の変化を解析するため、ミクロ交通シミュレーションを開発し、車両滞留の発生メカニズムを詳細に理解することを目的としている。  シミュレーションでは、車両の走行車線でのスタックや事故が後続車両による車線変更にどのように影響を与えるかを分析する。特に、車両の速度や車間距離、車線変更時の挙動が滞留の発生に与える影響を調査する。降雪時において、走行車線における車両のスタックや事故が、後続車両が追越車線に進路変更することで、さらにリスクを高める可能性がある。追越車線の路面状況や交通密度も、滞留リスクに影響を与える要因として重要である。  シミュレーションでは、車両と路面の相互作用を詳細にモデル化しており、車両の希望走行速度や車間距離、路面積雪量の変化などを反映して、リアルな交通挙動を再現している。車両エージェントは、前方車両との距離や速度差を考慮し、追従や追越行動を行う。路面エージェントは、積雪量を反映させ、車両の走行による自然除雪効果も組み込んでいる。これにより、積雪が車両挙動や交通流に与える影響を詳細に分析できる。  シミュレーション結果では、降雪の影響で車両の走行速度が低下し、速度分布に偏りが生じることが確認できる。初期段階では、車両速度が広く分布しているが、時間の経過とともに低速車両と高速車両に分かれ、最終的には低速車両が多数を占めるようになる。このような速度の偏りが、車両滞留の原因となる可能性が高いことが示唆される。また、積雪が進行することで、車両の走行性がさらに低下し、滞留リスクが増加することが確認されている。  本研究の成果は、降雪時の多車線道路における車両滞留リスクを低減するための対策を立案するための基礎資料となる。シミュレーションを通じて、車両挙動や積雪の影響を定量的に評価することができ、現実の交通管理における改善策や政策立案に寄与することが期待される。