渡邊和志 冬期高速道路における交通事故の発生要因分析とリスク評価 佐野可寸志 本研究では,新潟県を通る高速道路を対象に,冬期の高速道路における交通事故発生に影響を与える要因を分析し,交通事故の発生確率を推定するモデルを構築した. 交通事故発生要因の分析では,作成した事故データセットに対して,複数の一般化線形モデルを用いてパラメータの推定を行い,過分散検定とゼロ過剰検定を行うことで,データの特性に対応した適切なモデルを選択した.各検定の結果,ゼロ過剰負の二項回帰モデルが採用された.また,パラメータの推定結果より,平均車速,大型車混入率,最低気温,6時間降雪量,最大下り勾配,乾燥路面,薄雪・凍結・圧雪路面が事故発生に影響を及ぼす要因として有意であることが分かった. 交通事故発生確率の推定では,交通事故発生要因の分析で選択されたゼロ過剰負の二項回帰モデルに加え,機械学習であるlightGBMを用いて事故発生確率を推定した.事故発生確率の推定では,異なる5パターンの学習用データとテストデータを用いることで,モデルの推定精度に対するデータセットの影響を排除し,事故発生確率を推定する上で,データの分布や外れ値の影響を考慮した分析を行った.それにより,特定の年に対して精度が高いモデルではなく,汎用性の高いモデルであるかを評価した.事故発生確率の推定結果より,両モデルとも,どのデータにおいても同様の推定傾向がみられた.このことから,両モデルは特定の年に依存しない,汎用性のあるモデルであることが確認できた.また,事故発生区間の的中率を向上させると,偽陰性が増加する傾向がみられた.一方で,事故の見逃しを減らすために判定の基準を緩和すると,事故発生区間の的中率が低下し,偽陽性が増加する傾向がみられた.これにより,該当区間の通行止めをした際に,必要のない交通規制が生じることで,物流や観光などの経済的損失や迂回による所要時間が増加する可能性がある. 実務における活用を考慮すると,lightGBMは,データが変わるたびにモデルの説明変数の選択をする必要はなく,計算速度も速いため,迅速なリスク評価をする際に有効である.一方で,回帰モデルは推定された係数を基に事故発生確率に影響を与える要因を解析できるため,具体的な事故防止対策の検討に適している.よって,目的に応じてモデルを選択することが必要である.