鷲津晃平 冬期道路条件を考慮したミクロ交通シミュレーションの開発 佐野可寸志 本研究では,近年の集中豪雪による車両のスタックを起因とした車両の長期滞留を背景として,除雪や予防的通行止めといった交通施策を検討するための交通シミュレーションを開発した. 交通シミュレーションを作成するにあたって,冬期の交通状況を再現するために,冬期特有の車両挙動が重要だと考え,車両の速度に大きく影響していると考えられる路面状況といった冬期道路条件を考慮した車両の希望走行速度推定モデルを作成した.このモデルは路面や側方余裕幅などの道路環境,降雪量や風速などの気象条件,勾配や平面線形などの道路構造を説明変数とした統合的な速度推定モデルとなっている.速度推定結果は分析データとして車両の個車速度と適切に判別できていない道路環境データを利用したことで,高い推定精度にはならなかった.説明変数に関しては,路面や長時間降雪量の影響が大きく出ていたため車両挙動に雪が大きく寄与していることが分かった.冬期の車両挙動は速度推定モデル以外にも車両追従や車線変更モデルに関しても,道路環境によって車間距離や加減速度といったモデルパラメータが変化するようにした.また,路面が改善されることで速度回復するように設定し,除雪作業を再現した.交通シミュレーションの改善点として,大きな計算負荷や入力データが現状の観測技術では難しいことなど課題は多い. 作成した交通シミュレーションを用いて,本研究では車両の長期滞留の対策の一つである除雪作業について分析を行った.現状除雪作業計画の検討に明確な基準がないので,交通需要・降雪量別で除雪サイクルを変更し,社会・経済的に効率良くかつ安心安全な道路交通状況を維持できるような除雪パターンを求めた.結果は,路面遷移や車両平均速度から概ね路面積雪量5cmで除雪すると効率よく道路交通機能を維持することができ,除雪車ダイヤグラムから仮定した除雪計画の現状の基準とほぼ一致した.また,社会・経済的な視点から除雪作業を検討するため,除雪作業による便益と損失から費用対効果を分析する手法を提案した.物流や観光など交通目的が達成される便益や事故・スタックによる損失を考慮していなかったため結果を正しく推定することができなかったが,有効な方法であると考える.