谷本 百合香 ドローンLiDAR点群による植被率計測に関する研究 高橋 一義 本研究は、ドローンに搭載したLiDAR技術を活用し、農業における植被率の計測手法を検討するものである。日本の農業は高齢化と人手不足が深刻化している。この背景には、都市部への人口流出や農業の収益性低下があり、結果として労働力不足が加速し、作物の生産性や品質の維持が困難になっている。こうした課題に対応するため、スマート農業の導入が重要視されており、リモートセンシング技術を活用した生育状況の調査が行われている。 リモートセンシング技術を用いた生育状況の調査では、作物の生育を表す指標の一つとして、植被率が用いられる。植被率は通常、画像を二値化処理することで算出される。しかし、従来の画像解析では、天候や太陽光の影響を受けやすく、計測精度に課題があった。そこで本研究では、ドローンLiDARを用いた点群データを活用し、「植被指数CL」を提案することで、植被率を推定する方法を検討した。 植被指数は、点群を鉛直方向に層に分け、上空からの視点で見た際に植被率と対応する層の厚さを指標とするものである。画像から得られる植被率を基準値とし、LiDAR点群の植被指数との対応関係を分析した。データの対応関係を評価するため、線形近似、多項式近似、対数近似の3種類の近似手法を検討した。その結果、線形回帰では初めの測定日および後半の測定日に推定誤差が大きく、多項式回帰ではピークが生じ実際の植物の成長の様子にそぐわないことから、対数回帰が最も適切であると判断した。推定誤差は9.3~12.1%程度であったが、最初の測定日を除外した場合には7.1~7.8%程度まで精度が向上した。 作付け直後の植被率が低くなった要因として、水稲の成長プロセスが影響していると考える。水稲は田植え後、数日で新しい根が発生し、養分や水分の吸収を開始する。茎が増加する分けつ期を経て、出穂期に向かうにつれて急速に成長し、その後、成熟期を迎える。発芽から分けつ期の草丈成長率は低いため、作付け直後の植被率は低くなりやすい。一方、収穫期に近づくと草丈が一定となるため、後半の測定日の植被率も推定曲線から外れる傾向があった。 本研究の結果、ドローンLiDARを活用した植被率の推定が可能であることが示された。特に作付け直後のデータを除外することで、より高い精度で植被率を推定できることが確認された。今後の課題としては、異なる成長段階を考慮したモデルの構築や、さらなる精度向上に向けたデータ解析が求められる。