小林桃子 除雪パトロールにおけるMMSを活用した路面積雪深計測の検討 高橋一義 本研究では,除雪パトロールにおける効率的な路肩および路面上の積雪状態の記録のため,モバイルマッピングシステム(MMS)を活用した積雪深の計測手法を検討した.従来の積雪深計測は,作業負担が大きく,広域の積雪状態の把握が困難である.一方,各路線の積雪状態の情報は,除雪作業の効率化のための基礎資料となる.そこで,車載MMSを用いて道路積雪状態を記録し,除雪パトロールでの積雪深計測におけるMMSの活用可能性を検討した.  まず,簡易MMS(N-Quick)を用いて,路肩の堆雪状態を3D点群として取得し,雪面形状を考慮した路肩の堆雪深計測が可能かを検討した.結果,簡易MMSで得られた堆雪深と実測堆雪深との差が5 cm程度に収まった.標準偏差は,雪面形状を考慮した場合に小さくなった.これにより,雪面形状を考慮した路肩の堆雪深計測の有効性が示された.  次に,本研究室で開発した低コストMMSを用いて,路面上に設置した積雪区画の3D点群を取得し,積雪深の計測および各区画の積雪深の違いが判別可能かを検討した.発泡スチロール板を積雪に見立てた室内実験では,低コストMMSにより取得した3D点群は,基準となる3Dスキャナに比べ,高さを過小評価する傾向が確認された.また,路面上に設置した積雪区画の計測の結果,差分DSM法では室内実験同様にBLKに比べ0.9 cm~2.3 cm低く算出されたが,各区画間の積雪深の違いは判別可能であった.路面位置推定法では,BLKとの差が-1.6 cm~0.9 cmと差分DSM法に比べ小さくなった.さらに,統計的検証の結果,両手法ともに統計的に有意な差が確認され,2 cm以上の差があれば積雪深の違いを判別できることが示された.  これらの検討から,MMSは除雪パトロールにおける積雪深計測作業に適用できる可能性が示された.一方,実際の除雪パトロールで適用するためには,データ処理の効率化や計測精度についても更なる検討が求められる.今後は,異なる積雪環境や道路条件でMMSの適用可能性を評価するため,実際の道路積雪を対象にした実験を実施する必要がある.