磯野柊二 UAV-LiDAR計測におけるレーザスポットサイズの影響を考慮した水稲生育モニタリング手法の検討 高橋一義  著者らはこれまで,LiDAR計測により取得した水稲群落点群の鉛直分布(以下,VD)を解析し,水稲の生育情報(草丈・茎数)を推定する手法の開発を進めている.しかし,VDは使用機器や観測条件(飛行高度やレーザ入射角,レーザ光の発散角など)によって変化することが知られている.既往研究では,異なるLiDAR機器や飛行高度で計測を実施し,特定の観測条件でVDがどのように変化するか検討してきた.しかし,観測条件によるVDの変化を把握するには,異なるLiDAR機器,異なる観測条件下での計測を繰り返し実施し,その関連性を検証する必要があるため,時間的,労力的に大きな負担となる.また,すべての観測条件を網羅的に検証することは現実的に困難である.  そこで本研究では,VDを推定するシミュレーションモデルを用いることで,特定の観測条件におけるVDの関連性を評価する手法について検討する.特に,観測条件の一つであるレーザスポットサイズに着目し,VDを推定するシミュレーションモデルを用いて,レーザスポットサイズとVDの関係を検討することを目的とする.さらに,このシミュレーション結果に基づき,異なる観測条件で得られた計測結果を相互に換算する手法を確立することで,観測条件の影響を省力的に評価できる可能性があると考えられる.具体的な検討項目としては,研究室で開発中の,レーザが群落へ鉛直に入射する条件下において,群落茎葉と植被率が所与のもと,VDを推定するシミュレーションモデルを用いて,2022年度,2023年度の計測結果と比較を行い,モデルの有用性を検討する.また,異なる圃場においてもVDが推定可能か確認することで,モデルの汎用性を検討する.  その結果,2022年度および2023年度では生育初期を除き,モデル内でレーザスポットサイズの効果を表現するFSIが,FSI=6~9の範囲において,RMSE 10%以下でVDを概ね再現し,モデルに有用性があることが示唆された.加えて,異なる圃場で計測された場合においても,生育初期と出穂期を除いてFSI=6~9,RMSE 10%以下でVDを概ね再現し,モデルに汎用性があることが示唆された.一方,生育初期と出穂期で高い類似度が得られなかったことから,期間を設けた本モデルの適用が必要であると示唆された.また,RMSEのみで分布間の類似度を判断した場合,類似度を過大に評価する可能性が考えられる.