加藤 智紘 広域にわたる豪雨の時系列パターン分析と災害発生リスクに関する研究 熊倉 俊郎 本研究は、従来の降雨分類方法を再評価し、レーダーの10分間隔降水強度データを用いて時間変化する降雨の特徴を分析することを目的としている。近年、気候変動の影響により豪雨の頻度と強度が増加しており、土砂災害や河川氾濫などのリスクが高まっている。従来の降水観測にはAMeDAS等の地上観測データが利用されてきたが、観測点間の空間解像度が低く、降雨の局地的変化や細かな空間分布を把握するのが困難であった。一方、レーダー観測は広範囲を高い時間分解能で測定できるため、豪雨の詳細な時空間分布を分析するのに適している。本研究で対象とする豪雨は、『前線による令和4年8月1日から8月6日にかけての大雨等』である。この期間中の8月2日~4日に発生した東北地方および新潟県下越の豪雨を対象とし、気象庁の全国合成レーダーエコー強度データを使用した。対象区域の10分間隔の降水強度データから前後6時間無降水の期間を境に一雨降水を抽出し、降雨の特徴をNo. 1~No. 5の5つに分類し、その結果を地図上に分布した。 結果として、1時間平均降水量と10分間降水量を比較すると、10分間降水量のデータでは短時間の強雨をより捉えられることが確認された。しかし、既存の分類方法では10分間降水量データの特徴を適切に反映できず、多くの降雨が最高危険度のNo. 5(降雨継続時間6時間以上、最大降水量50 mm/h以上)に分類されるという問題が生じた。そこで、分類基準を見直し、10分間降水量データに適した分類を再設定した結果、より適切な降水パターンの分類が可能となった。また、降雨パターン分類の分布図と土砂災害発生地点の対応を検討したところ、局所的な降雨の強度と土砂災害の発生地点に一定の関連が見られた。しかし、河川の上流域での降雨パターンが下流域の災害に影響を与えることも示唆され、災害リスク評価には地形情報を考慮する必要があることが明らかとなった。本研究の成果は、レーダーデータを活用した降雨パターン分類の改善に寄与し、山間部やAMeDAS未設置地点における防災情報の精度向上に貢献する可能性がある。今後の課題として、河川流域の地形特性を考慮した降雨パターンの分析を進めることが求められる。