青木　悠悟

増水時におけるJR越後線信濃川分水橋梁の水理学的対策の検討

陸　旻皎，楊 宏選

近年、豪雨による河川の増水、氾濫が急速に増加しているため、被害の低減するための対策が急務である。新潟県では、2019年 10 月の台風 19 号によって記録的な大雨となり、複数の河川観測所で観測史上最大水位を観測した。JR越後線信濃川分水橋梁付近では、橋脚が確認できなくなるほど増水し、流木が橋梁に衝突する被害を受けた。これを受けて、国は左右岸の堤防強化工事による対策を行ったが、その対策では、越水に対する対策はできるが、水位を低下させることはできず、橋梁の破壊を防ぐ対策にはならない。
そこで、本研究では、河川シミュレーションを用いて、JR 越後線信濃川分水橋梁付近の増水時の状況を複数の条件で解析することによって、水理学的に水位を低下させる対策を検討することを目的として研究を行った。
開水路における水の流れ方には常流と射流があり、増水時の JR 越後線信濃川分水橋梁付近の流れは計算によって常流と確認されている。常流の河川で川の水位を下げる対策は、1）橋梁の位置で河床に突起を作る対策、2）橋梁の位置で河川幅を収縮させる対策、3）粗度係数を下げる対策の3 つの対策が考えられ、それらを理想的な条件で検討していくこととした。
1）の橋梁の位置の河床に突起を作ることによる対策の検証では、突起を作ることによって橋梁の位置で約0.6 m水位が下がった。また、コストや時間の問題から川幅全体ではなく局所的に突起を作れば良いのではないかと考え、両岸のみ、中心のみ、両岸と中心両方に突起を作って計算した。その結果、どの方法でも川幅全体に突起を作った結果と比べて 0.1 m 効果が小さくなった程度で、局所的に突起を作っても効果は出るということが分かった。
2）の橋梁の位置の河川幅を収縮させることによる対策の検証では、大きな水位低下にはならず、橋梁の位置よりも上流側でわずかに水位上昇がみられた。よって、この方法は効果が小さく、橋梁手前で上昇してしまう対策は有効ではないと考えた。
3）の粗度係数を下げることによる対策の検証では、粗度係数変更前から水位の低下が始まり、粗度係数の変更開始地点で最も水位が低下し、粗度係数の変更区間を広げることによって、最低水位の値が下がることが分かった。
以上の結果から、コストパフォーマンスや実現性などを考えると、1）の河床に突起を作ることによる対策と 3）の粗度係数を下げることによる対策を今後実地形でも検討していくべきであると考えた。