守田 佳弘 光学式降水粒子観測器による粒子の直径・落下速度データを用いた降水量推定方法の研究 熊倉 俊郎 全国各地には多くの降水量観測点が存在し、様々な用途に活用されている。現在広く普及している転倒ます型雨量計は、大雪時の融雪の遅れなどにより固体降水の正確な観測が難しく、多点観測に適した固体降水観測機器が必要である。熊倉らが提案した光学式反射型固体降水観測器(PDS)はそれらを想定した機器であり、安価で設置が容易、メンテナンス性が良いという特徴を持つ。本研究では、石坂ら(2013)において副次的に提案された粒子の直径と落下速度から降水量を算出する手法がPDSに適用可能か検討した。さらに、本研究のもう一つの目的として、石坂らの方法における降水種別の違いによる影響を検討した。この場合には実用化されている降水粒子観測器のLPMのデータを用いた。降水種別の違いを考慮した降水量算出を行うために、降水量算出と同じ時間間隔での降水種別分別を行い、降水種別の情報を付与した。その手法として、CMFという粒子直径と落下速度から定量的に粒子の特性を示す値を用いた。降水量とCMFの時間安定性は算出時間間隔の長短の影響が逆であるため、検討のうえバランスを考え5分間隔を採用した。分別した降水種別ごとの降水量算出値と基準値とで回帰分析を行い、回帰係数を比較することで差異を確認した。その結果、回帰係数には明確な差異が見られた。この結果は、考慮しなかった降水種が降ったことによる影響があったが、気温を考慮し、理想に近い条件となるようにデータの絞りこみを行った場合でも降水種別ごとに算出値の差異が生じることが確認された。また、石坂らの方法で算出される降水量は実測値と強く相関するが過小傾向があり、係数を乗じることで推定が可能とされていたが、降水種別ごとに係数を変えるとより実測値に近づく結果となった。PDSの降水量算出の結果としては、欠測や過小評価が多く観測された。これはPDSの物理量算定における、低確率で発生する大粒子の目前通過の観測と、高確率で発生する小粒子・遠方粒子の補完関係が5分間隔での算出では収束しないためであると示唆された。観測値の収束は降水強度や算出時間間隔に依存すると考えられ、算出時間間隔の検討の必要性が示された。また、PDSにおいても降水種別ごとの回帰係数の差異が見られたが、要因として降水量算出アルゴリズムの特性だけでなく、液体水の影響による反射光の減衰の影響も示唆された。液体水の影響を除き降水種別ごとに係数を適用することで相関係数0.813という比較的高い精度が得られた。