佐藤 遥 TDR法による土壌水分測定値に与える温度依存性の影響 陸 旻皎 高精度な土壌水分計測技術が求められる中,TDR法が注目される.この手法はTopp et al.(1980)により報告されて以降,国内外で標準的に使われている.しかし,TDR法による土壌水分量計測値と土壌温度の間に不自然な関係が確認されるという報告が相次いだ.この温度依存性を校正すべく,数多くの研究者が温度校正手法を提案してきた.ただ,温度依存性を引き起こす要因は明らかになっていない.自然環境下では土壌水分量の変動を引き起こす要素が多く,土壌温度そのものによる影響がどの程度作用しているかは未知数である.そこで山本(2023)による外部影響を受けない屋内実験の結果,TDR土壌水分量計測値の温度依存性が確認され,土壌温度そのものがTDR土壌水分量計測値に影響を与えていることが明らかとなったが特定の含水率のみ負の相関になるという結果が出ている.本研究では,山本(2023)の実験結果に再現性があるのかを同様の実験を行うことで検証し,同時に温度依存性が体積含水率計測値に与える影響を水分特性曲線の推定値と比較することで考察した. 実験に使用するガラスビーズの水分特性曲線を得るために西脇(2018)の実験結果,および三軸試験を実施することで土壌水分特性を表すvan Genuchtenモデルのパラメータを算出した.得られた水分特性曲線により西脇(2018)のモデルでは表現できなかった低含水率領域における水分分布を表すことに成功した.TDRによる実験の結果,計測値は温度依存性による体積含水率の上昇を確認したが,すべて正の相関となり,負の相関の再現は確認されなかった.また,得られた結果から温度変化と含水率の変化の勾配を算出した結果,体積含水率が大きくなるほど温度変化による勾配の影響が大きくなる傾向であり,高含水率になるとTDRセンサーを水平設置の勾配が大きくなったため,センサーを水平に設置した場合,温度変化による水分移動の影響を受けやすいということが示唆された.