小野 大樹   後方流跡線の移動距離による広域地上降水量推定の評価   熊倉 俊郎    新潟県をはじめとする北陸地方は日本有数の豪雪地帯として知られている.降雪の予報において主に使用されているものとして気象レーダーがある.近年気象レーダーの降水量分布は高解像度化が進み、局地的な降水を観測できるようになった。しかし冬期間における降雪は,上空から地上に落下する間に風の影響を受けやすいためレーダーで観測した座標の直下の降水量と一致するとは限らない.正確な地上の降水量分布を把握するために上空の気象情報が地上のどの地点の気象情報と一致するのかを調べる必要がある.本研究では、雪片を対象としてNHMの3次元風速場と技大レーダーを用いて,長岡アメダス周辺の10km×10km範囲を500mメッシュで後方流跡線解析を実施し,高解像度の降水量分布を作成した.さらに,地上降水量と3°仰角の解析降水量の対応が良好だった2022年12月18日18時0分から12月19日2時0分の期間において,3°仰角の解析降水量を地上推定降水量とし,他の仰角との対数誤差を2分間隔で算出した.これを基に移動距離範囲ごとの対数誤差の標準偏差を求め,50%信頼区間を算出した.これを用いて,解析降水量と積算降水量の信頼性を評価した。結果として、アメダス地点で解析降水量と地上降水量の対応が良好な期間では,各事例の距離範囲ごとの対数誤差のデータは、多くの事例で正規性があると確認されたため、信頼性を評価するために標準偏差を使えることがわかった。12月18日23時0分以降から風が徐々に弱まり,その影響のためか各仰角の降水量分布のずれが大きくなった.また、18日23時0分以降の地上降水量と3°仰角の解析降水量の1時間降水量の差が19日0時0分では1.172mm/h、1時0分では0.456mm/h、2時0分では0.346mm/hとなっており、18日23時以前の降水量の差に比べ値が大きい。12月18日23時0分以降の期間における50%信頼区間のCI50_highとCI50_lowを時間平均しその幅を閾値として使用し,この幅以下となった時を信頼性があるとし,信頼性があると判定された事例数は全事例数240のうち167事例となった.全体の69.58%で信頼性があると判定され,過半数の事例で信頼性があることがわかった。信頼度を評価するために設定した対象期間は全体の評価としては信頼度があるといえる.