田村 悠人 鋼コンクリート複合構造における接合部の腐食が力学特性に及ぼす影響 下村 匠 鋼コンクリート複合構造では,接合部に腐食が発生した場合,力学性能が損なわれる懸念がある。そこで,本研究では,ずれ止めとして一般的に用いられている頭付きスタッドを対象とし,腐食の影響を把握することを目的として実験を行った。 まず,頭付きスタッドに腐食が発生した場合の,腐食ひび割れの導入や進展の仕方に関しての実験を行った。鋼コンクリート複合構造の接合部を模した2体の供試体を作成し,電食法によりスタッドに腐食を発生させた。供試体はそれぞれ,スタッドの腐食により腐食ひび割れが導入されるのかを明確にするために150×150×150mmのコンクリートブロックにスタッドを1本配置したものと,スタッド間でのひび割れの進展を確認するために150×250×150mmのコンクリートブロックにスタッドを2本配置したものを用意した。スタッドの配置は,複合構造標準示方書より,最小間隔の100mmとした。目視で,コンクリート表面に腐食ひび割れが確認出来た後,電食を終了し,腐食ひび割れの調査を行った。スタッドが1本の供試体では,スタッドから各コンクリート表面に向けて4方向にひび割れが確認されたのに対し,スタッドが2本の供試体では,スタッドの軸方向にコンクリートを割裂するように1本のひび割れが確認された。このことから,スタッドに腐食が発生すると,コンクリートに腐食ひび割れが導入されることが明らかとなった。また,スタッド間隔が小さい場合,スタッド間で腐食ひび割れが連結することが確認された。 次に,スタッド間で腐食ひび割れが繋がることで,力学特性に及ぼす影響について解明を行った。日本鋼構造協会の,頭付きスタッドの押し抜き試験方法(案)を基に,スタッド間隔を100mmとした供試体を3体作製した。腐食による劣化の程度を,潜伏期(腐食なし),進展期(腐食あり・ひび割れの連結なし),加速期(腐食あり・ひび割れの連結あり)の3水準を目標に電食試験を行った後,押抜き試験を行い,それぞれの力学性能を調査した。質量減少率が2%程度で,スタッド間で腐食ひび割れが繋がっているのが確認された。力学性能は,腐食ひび割れがコンクリート表面において連結していても,腐食減少量が2%程度であれば,影響は小さいことが判明した。しかし,より腐食が進行し,ひび割れ幅が拡大した場合における力学性能に及ぼす影響は解明できていないため,今後調査していく必要がある。