井熊 倫太郎 社会基盤構造物を対象とした外部環境デジタルツインの構築 中村 文則 近年数値シミュレーション技術によるコンクリート構造物の劣化現象を予測する研究が盛んに行われ,構造物の劣化過程の予測が可能になりつつある.その一方で,ICT・IoT技術やデータマイニングなどの情報工学技術の急速な発達により,様々な分野で利用できるようになっている.このことから土木分野で開発されてきた数値シミュレーション技術に情報工学技術を高度に融合させることで,コンクリート構造物の劣化予測解析を実施できる可能性がある.本研究では,数値シミュレーションと3次元仮想空間技術を融合した実構造物の外部環境予測システムの構築を目的として,実構造物とその周辺環境の仮想空間再現および,仮想空間における実構造物の環境作用の予測解析を実施した. 仮想空間はドローンを用いた写真測量によって取得した点群データ,,Unity内のオブジェクトモデルを組み合わせることで構築した.数値シミュレーションは日射,風況の空間分布,飛来塩分の空間分布についてモデルと計算条件を組み込んだ.またWeb上に公開されているリアルタイムの外部環境作用を自動的に取得・保存し,外部環境予測システムに同期させる方法を示した.これらの仮想空間,数値シミュレーション,リアルタイム情報を組み合わせることで,実構造物における外部環境作用を仮想空間内で再現可能であることが示された. 構築したシステムの妥当性を検証するために,構築したシステムと現実空間との比較,数値シミュレーション結果の反映を確認して評価した.その結果,仮想空間内の構造物とその周辺地形は粗い部分も見られるが,仮想空間を利用して構造物とその周辺地形を十分に再現できていることがわかった.コンクリート構造物表面の日射作用においては,現実空間の日射作用範囲と仮想空間で予測した日射作用範囲がおおよそ一致していることが確認された.対象構造物周辺の風況の空間分布,飛来塩分の空間分布において,数値シミュレーションの結果を適切に反映できていることが確認された. 以上の結果から,仮想空間技術と数値シミュレーションを融合することにより,現実空間で可視化が困難である風況や飛来塩分の分布を容易に確認でき,構造物の管理において有効であると考えられる.また,環境作用が事前に計算された既存の数値シミュレーションを利用し,web上の環境作用データと組み合わせることで,システム内での予測時間を短縮し,ほぼリアルタイムの予測できることが示された.