氏名:村川知樹 論文題目:水難事故に着目した琵琶湖の地形特性および水難事故発生状況について 指導教員:犬飼直之 近年,琵琶湖では水難事故が相次いでいる.2023年8月には琵琶湖西側で4件の水難事故が発生した.そこで琵琶湖の地形特徴を把握し,西側で多発する水難事故発生要因を考察する.手法として,調査資料から既往事故情報や特性の把握及び現地調査をおこない事故多発場所の特徴を把握する. 2016年~2023年の8年間で22件の水難事故が発生しており,近江舞子周辺では16件発生していた.琵琶湖西側で,特に近江舞子周辺で事故が多い.次に,琵琶湖上の地形特徴および流れを把握した.水深図から,近江舞子周辺では密な等深線になっており,急な水深増加がみられる.夏季の還流について,中央部では右回りの循環流で北部と南部では左回りの循環流が発生している.近江舞子付近では,南向きに約10cm/s程度の還流が発生しているが,遊泳者を流すような流れではない. 2023年8月18日に発生した事故について,近江舞子中浜水泳場で現地調査を実施した.漂流実験では,南東沖合へ数メートル移動したが顕著な流れは確認できなかった.水深測量から岸沖方向の水深変化を把握した.汀線から十数メートルまでの水深変化は緩やかであったが,20m付近で急激に増大した.汀線から18m地点の浅水深で勾配28°を記録しており急勾配であった.また,同地点で底砂を採取した.粒度試験から,中央粒径は1.5mmで安息角は約28~35.2°であると推定できる.以上より,琵琶湖での水難事故は西側に集中しており,特に近江舞子水泳場で多く発生している.琵琶湖西側は急勾配になっており,水深も急激に増大している.崩れやすい砂利の斜面で体が着底しても留まらず水深深くへ沈んでいくことがわかった. 水難事故の多い近江舞子水泳場だが,大津市の水泳場の利用者の半数は近江舞子を利用している.人が集まる理由として,JRにより交通の便がよいこと,水質が琵琶湖の中でも良い水域であることが考えられる. そこで,琵琶湖で安全に水遊びできる場所を選定した.水難事故発生件数,地形の面で安全であるか及び管理された水浴場であるかという点を考慮した.その結果,新野浜水泳場と宮ヶ浜水泳場が比較的安全であると考えた. 浅水深であっても一気に足が届かなくなり,溺れてしまう.溺れてしまっても発見が早ければ助かるが,水深が深いことにより一度沈んでしまうと発見,救助が遅れ助からなくなる.事故を未然に防ぐために水深が深くなる場所を把握すること,淡水で海に比べて浮きにくいため疲れを感じたら休憩し無理をしないといった行動が必要でである.