塚野音吾 福岡県犬鳴川で発生した児童3名溺水事故に関する調査解析 犬飼直之 2023年7月21日に福岡県宮若市の遠賀川水系の犬鳴川で発生した小学6年生の女児3名が亡くなった水難事故について,水難学会がおこなった現地調査より,事故の発生原因についての考察をした. 事故現場は,犬鳴川と山口川が合流する地点である.事故日と調査日ともに降水は見られなかった.また,聞き取り調査によって,河川の状況は,同様な状況であったと確認することができたため,現地調査への影響はないと考えられる.今回の河川では,太陽光の反射によって,水深がわかりづらい状況であった.また,入水場所は,0.5m程度と比較的低水位であったが事故発生場所に近づくとだんだん深くなり,2mを超える水深も見られた.このような地形は,「隠れため池」と呼ばれる地形である.また,水底の調査も行われた.水底は,大人がしっかりと捕まっても崩れない状態であったが,水底に短い植生が生えていたため,滑落しやすい状態ではあった.水底を採取し安息角の測定を行った.今回の水底は,大粒の礫状であり,安息角は,34°~40°であった,現地調査より,現場の傾斜は,27°~30°であったため,安息角からも崩れにくい水底であったことが確認できる.今回の水難事故では,太陽光の反射によって,水深が把握できていなかったこと,水深が急増する,隠れため池のような構造であったこと,また,水底に植生が生えていたことから滑落しやすい状態であったことの3点が大きな原因であったと考察した. 川の合流地点での水難事故は,2022年度に5件発生しており,それぞれ川の合流地点の特徴である,流れが複雑であることや,その流れによって河床が削られ深くなっていることが原因となり事故が発生している.2023年8月13日には,村上市三面川と門前川の合流地点でも同様な事故が発生している.またここでは,川沿いに河川公園が存在し,容易に入水できることから奇警な場所と考えられる. 水難事故を防ぐためには,河川の状況を確認すること,子供だけでの入水を行わないこと,ひざ下まで入水に制限すること,ライフジャケットの着用などを行うことが有効であると考えられる.