岡田大樹 水難事故に関連する琵琶湖を吹送する水上風の特性の把握 犬飼直之 琵琶湖では近年水難事故が多発しており,事故が発生する原因の一つに風の存在が指摘されている.琵琶湖では西側に位置する比良山系から比良おろしという強風が吹くことがある.浮き輪などを使用し遊泳している最中に比良おろしが吹き,沖に押し流されてしまうことがあるという.本研究では,どのような天候時にどのような風が吹くのか,過去の事故日と風データや天気図を比較して特徴を把握することを目的とした. 比良おろしが卓越する時期,水難事故が多発する夏季の風の特徴を把握するためにMSMデータを使用し,近江舞子周辺における1年分の風データの抽出を行った.水難事故が多発する夏季においては南からの風向が卓越し,危険といわれている比良おろしの風向である北北西からの風は秋季や冬季に卓越することが分かった.しかし,2023年8月には北北西の風は約15%確認され夏季にも比良おろしが発生することが分かった. 夏季に発生する比良おろしの天気図パターンの調査を行った.調査対象は2022年8月と2023年8月のうち比良おろしが発生した18日間を対象とした.琵琶湖地域環境教育研究会によると比良おろしが発生する天気図パターンは主に関東沖低気圧型,寒冷前線通過型,南岸低気圧型,台風通過型,西高東低型,高気圧張り出し型の6パターンあるという.このパターンのうち夏季に多く確認された発生パターンは全18日中台風通過型が5日間,西高東低型,高気圧張り出し型が8日間とこの3パターンであった.西高東低型によって発生した場合,高気圧張り出し型となり数日にわたり比良おろしが吹く場合があるため注意が必要である.また,風速に着目すると,台風通過型と高気圧張り出し型のように高気圧の等圧線が日本海側に凸になっていると強い比良おろしが吹きやすいため注意が必要である. 比良おろしが観測された日のAMeDASデータの調査を行い気温変化や天気の特徴の把握を行った.AMeDASデータより比良おろし発生時,気温は低下する傾向がみられ,晴れまたは曇りの場合が多いことが分かった。このことより天気から比良おろしの発生を予測するのは難しいと考えられる. 比良おろしによる漂流防止のためには事前に天気図を調べ比良おろしの発生が予想されるなら遊泳を取りやめるなどの対策が有効であると考えられる.