音田 有輝 柏崎中央海岸の高波浪時における波浪特性の把握 犬飼 直之 2022年8月16日午後2時すぎ,柏崎市東港町の柏崎中央海岸で埼玉県に住む小学3年生の男の子が沖に流され,行方がわからなくなった.一緒に訪れていた祖父が救助のため海に入ったものの波打ち際から10メートルの地点でうつ伏せになり,溺死してしまうという事故が発生した.海水浴場などの一般的な海岸は海岸勾配が比較的緩やかであり,汀線から離れた沖側で砕波するため波のエネルギーが減衰した状態で陸地へ到達する.そのため陸上へ遡上する波エネルギーは小さく,砂浜上にいる人に被害を及ぼす可能性は低い.しかし,事故が発生した柏崎中央海岸では柏崎港西防波堤の影響を受けない波向時には,海岸前面海域での波浪状況が減衰しない上に,砕波しない波浪が汀線に衝突し,そのままの勢いで,海岸上を遡上し流下する海岸である.そのため海岸前面の水域での事故だけでなく,砂浜上にいても事故発生の危険性がある. 本研究では,海岸波の挙動や海岸前の流れの特徴などを把握して,今後の事故防止のための知見を得ることを目的としている. 海岸前の流れの特徴を把握するためにCADMAS-SURF 2Dを用いて計算を行う.そのために柏崎中央海岸の地形データと事故時の波浪が必要である.そのため現地調査により柏崎中央海岸の地形データを把握する.続いて事故時の柏崎の波浪の確認を行う.しかし事故時の柏崎の波浪は欠測しており,データがないため,直江津の波浪を用いて柏崎の波浪の推算を行う.推算の方法は,事故時の柏崎と直江津の海上風パターン(平面図)を算出し,同様な海上風パターン(天気)時の2014年,2020年の柏崎港と直江津港の波浪観測データを抽出,そのデータを用いて,事故時の波浪状況の把握を行う.その結果求められた柏崎の波浪が正しいかどうか確認するため回折波から推算した波高と砕波波高,報道の画像から推測する波高の比較,動画から算出した波の流下・遡上速度とCADMAS-SURF 2Dを用いて求めた波の流下・遡上速度を行う.この2つの比較を終えた柏崎の波浪を使用し,砂浜を流下・遡上する波の挙動の把握を行う.その後,求めた計算結果と類似条件での既往研究の成果である避難困難度と流速・水位の関係の図と照らし合わせて,事故時の柏崎中央海岸はどの程度の位置まで避難困難だったのかの把握を行う. 以上の結果から研究結果として柏崎中央海岸において事故時の波浪では,水中だけでなく砂浜上にいても遡上波により事故が発生する可能性が高いと考えられる.