稲川廉 洋上風力発電のための国内海域および主要国海域の海上風の比較 犬飼直之 現在日本では洋上風力発電関連の促進区域などが指定され,それぞれ事業が進行している.新潟県周辺海域では,村上市・胎内沖が促進区域に指定され,2023年12月に三井物産株式会社,RWE Offshore Wind Japan村上胎内株式会社,大阪瓦斯株式会社を構成員とした村上胎内洋上風力コンソーシアムが事業者として選定されている.また,本研究グループの既往成果より,国内の他地域と比較しても佐渡市沖も洋上風力発電に好条件である可能性も示されていることから,本研究では,日本と欧州,中国について,風況・海象特性の比較を行い,佐渡市沖における洋上風力発電の可能性を詳細に検討した.その結果,日本は風速の季節変動が大きく,夏季の月間平均風速がほとんどの地点で5m/sを下回るが,新潟県沖で冬季に11m/sに達するなど欧州のウィンドファームに匹敵するほどのポテンシャルを秘めている海域があることが確認できた.日本の仮想風車設備利用率は冬季に欧州並みの50%となる地点もあるが,風速同様,夏季の数値が悪いため,NEDOの指標を十分に満足しているとは言えない.つまり,本研究で比較対象としたVestas社V164-9.5MW機は適していないと考えられる.また,日本の促進区域で実際に導入される風車は,発電容量が12MW~18MWと大型かつ高効率な風車であるため,設備利用率は本研究で導き出した数値より向上すると考えられる.風向は季節風の吹き込む方角や海陸風の方角が一致する海域の方が,風向分布が一直線に定まりやすく,効率的に風力エネルギーを取得できると考えられるが,佐渡市沖は出現頻度が多い方角が直角に分布している風向特性となっており,時間帯別,季節別などの風向特性を詳細に把握し,効率的に風力エネルギーを取得できるよう制御するシステムを構築する必要であると考えられる.佐渡市沖の水深は100mを超えているため,浮体式洋上風力発電が適していると考えられる.また,高波の出現頻度を欧州,中国・台湾と比較すると,日本海側の海域は,欧州,中国・台湾と比べて高いことから,設計基準を高く設定する必要があると考えられる.一方,太平洋側の海域,東シナ海側の海域は,欧州,中国・台湾と同等かそれ以下であった.うねりは日本海側の海域と欧州が同様の特性を持ち,冬季に中位または長いうねりが増加する傾向が見られた.波向は海域により特徴が違い,尚且つ風向と違い陸側からの波は発生しないため,風向と波向は同様の特性を持たない可能性があることが確認できた.以上より新潟県佐渡市沖は,同じ新潟県周辺海域の村上市・胎内市沖と同等かそれ以上の洋上風力発電のポテンシャルを秘めている可能性があると考えられる.