原澤由展 地盤材料の引張強度の評価方法に関する研究 福元 豊 近年,地震等の自然災害が激甚化しており,その被害や対策が大きな社会問題となっている現状である.土壌のひび割れが進展すると,地盤工学的,地質学的,環境的な面で大きな問題を引き起こす可能性がある.前提として,その土のひび割れを生じさせる引張強度を測定,評価することが重要となってくると言える.既往の地盤材料における引張試験機では,コンクリートと違い,供試体を部分的に掴めないため,面的に掴む方法が取られている.しかし,この方法では枠に十分に充填しづらいことに加え,摩擦による影響がある.コンクリートでは供試体の上下端部をガッチリ掴むが,地盤材料にそれを当てはめると端部が破壊されてしまうため,新しい機構が必要と考えた.そこで,本研究ではメンブレンで供試体を覆うことで,一部に力を加えずに均等に力をかけ,面的に掴む方法を用いて引張試験を行うこととした.本研究で用いた供試体は,締固め(青粘土),締固め(笠岡粘土),圧密(笠岡粘土),不撹乱試料の4つである.供試体作成方法として,締固めと圧密の2つの方法を用いて行なった.締固めについては,5層や10層のような既往の方法では真空圧をかけた段階で破壊してしまう.そこで1層で上下から締固めることで層境界を形成せずに供試体を作成できる方法をとった.以上から,締固めよりも圧密で作成した供試体の方が,ピーク点が遅く出ていることがわかる.また,同じ笠岡粘土を使用していても締固めと圧密ではグラフの傾きやピーク点が違い,圧密の方が緩やかなグラフになっている.不撹乱試料は強度が小さいものの,傾きが変わってから破壊までの時間が他の供試体と比べて長いことがわかった.締固め(青粘土)は全体的に引張強度もひずみも小さいことがわかった.以上より,本研究の目的である,真空圧を用いて地盤材料を固定する方法での直接引張試験方法が可能かどうか,そこから得られる試験結果を得ること,諸条件の定義を達成できた.今後の課題として,圧密・不撹乱試料のデータの収集を行なっていくこと,実地盤から採取した不撹乱試料を使用して引張試験を行うこと,メンブレンの長さを変化させた場合の実験結果の変化を調査する等を挙げる.