氏名 : 杉谷 倫亮 論文題目 : 事例解析による斜面属性とAI斜面広域危険度の分析 指導教員名 : 大塚 悟 概要 : 近年、わが国では豪雨による土砂災害が増加している.AIによる斜面崩壊の予測が進んでいるが,そのほとんどが独立したメッシュを用いており,周囲の地形特徴を考慮できていない.実際の崩壊のうち,大規模崩壊はマクロな地形の影響を受けるのに対して,小規模な崩壊はミクロな地形の影響を受ける.そのため,メッシュ単位で崩壊現象との関連を調査する従来の方法は斜面の崩壊特性を反映しない.本研究は地形的特徴の異なる地域に対し,広域情報を入力した機械学習による予測を実施し、その結果を入力とする画像認識を行うことで,崩壊ブロックを抽出することを目的とする.また同時に,各地域での崩壊予測に最適の地形データを明らかにする.機械学習による予測では、DEMのサイズおよび移動平均値の大きさを変化させた場合の崩壊予測を行い,使用する地形データによる解析制度の差異を考察する.画像認識による予測は,画像変換アルゴリズムを用いて,崩壊地密度の高い箇所を崩壊ブロックとして抽出することをねらいとしている. 各地域で機械学習による分析を行い,すべてのエリアで,移動平均値を用いた場合により高い精度が得られた.また,1mDEMの場合,指標のみ(10項目)や,指標と移動平均値を組み合わせて学習項目数を増やす(30項目)場合よりも,移動平均10mの地形量のみ(10項目)を用いた場合に高い精度が得られる傾向がある.5mDEM地形量を用いた場合でも,移動平均値を用いた場合に優位性がみられた.危険度評価図では,学習項目を増やした場合に危険度評価値が0.5~0.7のあいまいな領域が減少したため,よりはっきりとしたモデルになると考えられる.しかし,5mDEMや10mDEMを使用した際に,予測性能の大幅な低下がみられるため,細かな地形の起伏を考慮することが必要であると考えられる. 次いで機械学習の結果をもとに,各エリアで最も精度が高くなったケースに対し,同様の条件で画像変換アルゴリズムを適用した.その結果,機械学習で崩壊と予測された箇所が密集するところでは崩壊ブロックが抽出された.また性能指標に関して,すべてのケースで正解率および精度が向上することが確認された.対して真陽性率はすべてのケースで低下した.画像認識によって正解率・精度が向上するのは,機械学習で崩壊と判定された箇所が集中するところが画像認識で崩壊ブロックとして抽出されやすく,対照的に小規模の崩壊は見逃されてしまうため,崩壊地密度の高いところでの崩壊判定,崩壊地密度が低いところでの非崩壊判定が増えることが原因と考えられる. 実際に500㎡以上の大規模な崩壊箇所の多いArea-Bでは,正解率・精度が大幅に向上し,真陽性率が大幅に低下した.