堀越晟冶 複数の試験方法による締固め土の亀裂を伴う破壊特性に検討 福元豊 近年,問題視されている盛土崩壊等に際した土構造物内部の亀裂の存在は,土構造物に工学的影響を及ぼすもので,地盤工学的だけでなく地質学的,環境的な面でも大きな問題を引き起こす恐れがある.本研究室では,これまで地盤材料の破壊現象についてPeridynamicsとDEM を用いた解析モデルの作成及び高度化を行ってきた.しかし破壊現象に対する数値計算技術が高度化されてきた中,締固め土の数値解析モデル化するために参考とする実験結果やその実験方法の検討がされているものは少ない.そこで本研究の目的は,解析モデルの高度化に用いることが可能な,実際の破壊挙動や,亀裂を伴う破壊に関する破壊特性を取得するための試験方法の開発およびデータの取得を目的とした.そこで破壊特性として亀裂進展挙動,引張強度,破壊靭性の3つに着目し試験結果の検討を行った.亀裂進展挙動に関しては割裂引張試験,引張強度に関しては,割裂引張試験と直接引張試験,破壊靭性に関しては割裂引張試験と三点曲げ試験より得られた結果より比較・検討した.また,各試験の試験方法についても破壊特性取得に適切かどうかの検討を行った. 試験の結果,亀裂進展挙動では開口型の破壊モードが強く表れるケースや面内せん断型との混合モードでの破壊が見られるケース,面内せん断が強く見られる箇所があるなど,初期亀裂角度別によって結果に差異が見られる結果を得ることができた.引張強度に関して,初期亀裂の存在による引張強度の低下がみられ,初期亀裂なしの60%〜84%程度まで低下した.初期亀裂角度15°,30°で最も引張強度が低下し,90°に近づくほど引張強度低下量は少なかった.また,岩石状材料の結果とは異なる傾向を示した.破壊靭性に関しては割裂引張試験に比べ三点曲げ試験によって求めた破壊靭性の方が大きいものの青粘土供試体では近い値をとっていた.笠岡粘土の割裂引張試験以外では再現性のある結果を得ることができ,数値解析モデルに用いる破壊特性を所得することができたと考える.  今後の展望としては,本研究にて行った試験は試験方法が明確化されたものではないため,試験方法をより明確化することや,青粘土以外の材料でも同様に試験より結果を得られるのか試験を重ね検討する余地がある.これに加え供試体への亀裂の設置方法改良による亀裂形状の一律化を行うことで,今後は他の材料とは異なる締固め土特有の破壊特性を得ることに寄与できると考える.