菅原 あいり 繰り返し圧密試験と地下水の冬期揚水による広域地盤沈下の数値解析 大塚 悟 地盤が沈下する要因の一つには,地下水位が変動することにより地盤に作用する繰り返し荷重がある.新潟県では冬期の消雪に地下水を利用する消雪パイプが普及しており,消雪に利用するため地下水位の年間変動は極めて大きく,継続的な地盤沈下を引き起こしている.上越地域にて起きた地盤沈下問題は,昭和59年から61年の豪雪年において消雪用地下水利用の増加により,全国上位の地盤沈下が生じたことで,従来の上水道や工業用の規制から消雪用を重点とした各種の地盤沈下対策を展開することとなった.冬期の道路の確保は市民生活や経済活動にとって必要不可欠である.地下水を過剰に汲み上げれば,地盤沈下が生じることは自明のことであり,行政も市民も地下水に依存しない除雪体制を作らないことには,根本的な地盤沈下防止対策とはいえない.地下水の利用が毎年同じ規模で安定的に実施されれば地盤沈下は収束すると推測されるが,現実には地下水の変動に対して沈下が収束する期間を推測した事例は過去にない上,地盤が過圧密状態になっても地下水位変化の繰り返しに対する沈下の発生も危惧されている. 本研究では,地下水位の変動を圧密荷重の載荷・除荷の応力サイクルで考慮する1次元圧密試験によって,現地地盤の圧密特性を明らかにし,圧密試験から得られた結果から解析パラメータを決定し,地盤沈下の完全連成解析を実施することにより,地下水の繰り返し変化に対する軟弱地盤層の沈下挙動について数値解析により検討した. 解析的検討では,現地調査の行われた地盤をモデル地盤として地下水の揚水を模擬した地下水位の繰り返し変化による地盤の変形解析を実施した.解析にはSubloading tij model,および修正カムクレイモデルを用い,冬期に揚水を実施し,春期から秋期まで地下水を涵養する期間を模擬した地下水位の変動モデルを用いた解析を行った.修正カムクレイモデルは過圧密領域における塑性変形を記述できないが,Subloading tij modelは塑性変形を表現可能である.両モデルによる数値解析の比較より,地下水位の繰り返し変化が定常的で地盤応力が過圧密領域に留まっても,地盤沈下が継続することが示唆された.地下水の利用による消雪は地盤沈下を引き起こす原因となるため,冬期における地下水位の急激な低下を生じさせないような地下水位の変動と折り合いをつけられる持続可能な消雪システムを新たに構築する必要がある.